あの大惨事を忘れるな!
抜本的な安全対策を
JR東日本会社―国土交通省に申し入れ
(国土交通省への申し入れについては次号に掲載)
運転保安に関する申し入れ
4月25日に福知山線・尼崎駅付近で発生した列車横転事故は、107名の乗客・乗員の尊い生命を奪う、日本の鉄道史上最悪の大惨事となった。
二度とこのような惨事をおこさせないために、利益や効率化を最優先する経営姿勢からの脱却を含め、安 全対策の抜本的な強化、見直しが求められていること
は言うまでもない。
JR東日本においても、レール破断が頻発するなど、「安全の危機」はすでに差し迫った問題として顕在化している。
また、尼崎事故から1ヵ月が経つが、JR東日本では、「基本動作の徹底」といったこと以外は、尼崎事故にふまえた安全対策の強化・見直しについて何ら提起されていない。
こうした現状にふまえ、運転保安の確立に向けて次のとおり申し入れるので、誠意をもって回答すること。
記
1.JR東日本として、尼崎事故をどのように教訓化し、この大惨事にふまえた安全対策をどのように考えているのか明らかにすること。
2.鉄道輸送業務は、経営効率よりも安全が優先されるという思想を全社員に徹底すること。
3.運転取扱い関係
(1) 「速度向上区間」について、どのような根拠で設定されているのか明らかにするとともに、「速度向上区間」の取扱いを廃止すること。
(2) 在来線130q/h運転を中止すること。
(3) 日常的に遅れが発生している列車を調査し、ダイヤ設定を見直すこと。
(4) ATOS区間と非ATOS区間、支社間等によって異なる運転取扱い方法を統一すること。
(5) 乗客の安全を確保するために、列車のホームへの進入速度、通過速度を制限すること。
(6) 運転取扱い等を変更する時は、JR東日本とJR貨物で、同一内容の教育・訓練が行われるよう、細部にわたる調整を行うこと。
また、運転取扱いに関する用語等にも齟齬が生じているので、厳格に統一し、改めて訓練を行なうこと。
(7) 指令から運転士等への指示については、厳格に規程に則った内容で行うこと。
(8) 輸送混乱時の列車整理の失敗による輸送混乱拡大の多発等、列車運行管理能力が著しく低下している現状にふまえ、指令能力向上に向けた抜本的対策を講ずること。
(9) 輸送混乱時の列車整理について、貨物列車が長時間放置されている現状が多発している実態にふまえ、JR貨物との間で、列車整理のルールを確立すること。
4.車両関係
(1) 軽量化車両について、これまで会社は、「充分な強度は確保されている」、「軽量化はされているが、従来の車両よりも構造的にむ
しろ強化されている」と主張してきたが、どのような根拠に基づくものであったのか明らかにすること。
(2) 軽量化車両の安全上の強度について、どのような検証が行れているのか、具体的に明らかにするとともに、尼崎事故にふまえ、軽量化車両の強度強化対策を速やかに実施すること。
(3) 車両の軽量化や二階建車両化による重心(乗客数の多寡による変化も含め)の変化と曲線での安定性について、どのような検証が行われているのか、具体的に明らかにすること。
(4) ボルスタレス台車の曲線、S字曲線での安定性について、どのような検証が行われているのか明らかにすること。
(5) 車両の検査周期を延伸前に戻すこと。
(6) この間会社が実施している車両検修の業務委託を中止し、直営を主体とした業務体制に戻すとともに、法に定められた高齢者の雇用継続をJR本体で行うことにより、技術力の継承対策を実施すること。
5.線路関係
(1) 昨年から今年にかけて、千葉支社管内でレールが相次いで破断したり、枕木のずれによる軌間縮小、枕木のずれによる軌道きょう落、カント不足等が多発するという異常事態が発生していることについて、次の点を明らかにすること。
@ レール破断が頻発する原因について、千葉支社は1年以上にわたり「調査中」としたままであるが、会社、総研等での調査の現状を詳細に明らかにすること。
A JR発足後の全社的なレール破断の実態について具体的に明らかにすること。
B 昨年12月に行われた「レール損傷管理の見直し」後もレール破断が相次いでいる現実についての見解と対策を明らかにすること。
(2) 「脱線防止ガード」の設置基準及び設置実態を明らかにすること。また、保守作業等のために撤去した際、貨物列車だけを徐行対象としている根拠を明らかにすること。
(3) レール破断等の多発について、徹底した原因究明を行うこと。また、保線社員による全線区の総点検を行い、その結果を明らかにすること。
(4) シェリング、きしみ割れ等が認められる全ての箇所について、早急にレール交換を実施すること。
(5) 前記(3)〜(4)の対策が終了するまでの間、列車の最高速度、制限速度を制限すること。
(6) 線路の徒歩巡回周期、列車巡回周期を延伸前に戻すこと。
(7) この間会社が実施した保線、電力、信通等の業務委託を解消し、直営を主体とした業務体制に戻すとともに、法に定められた高齢者の雇用継続をJR本体で行うことにより、技術力の継承対策を実施すること。
6.保安設備関係
(1) 曲線の速度制限に対するATS−P及び速度照査の地上子の設置基準及び、 設置実態を具体的に明らかにすること。
(2) 今後のATS−P導入計画を明らかにすること。
(3) 「ATS-P」「ATS-Ps」「ATS-Pn」という種類の違いによる速度照査等の機能の違いについて、運転士に全く教育が行われていないので、具体的に明らかにすること。
(4) 「場内信号機に対する進行の指示運転」を中止し、場内及び出発信号機の位置づけを従来どおり、「絶対信号機」とすること。
(5) 編成両数、車種等により乱立させている停止目標について、一定の基準をつくり、最大限統一すること。
7.労務政策及び、運転士養成、訓練関係
(1) 技術断層を解消するためにも、強制配転されているベテラン運転士を直ちに職場に戻すこと。運転士資格保有者を直ちに運転士に発令すること。
運転士発令及び、昇進-主任運転士発令について、組合所属による差別を直ちに中止すること。
(2) 他職についても、組合所属による昇進差別を直ちに中止すること。
(3) 運転士の養成について、座学6ヵ月、運転士見習い6ヵ月の期間を確保すること。また、運転士発令までに、一定期間車両検修業務を経験させること。
(4) 指導員、指導操縦者の指定について、組合所属による差別を中止し、運転士及び運転士見習いの指導に関し、業務遂行、技術継承、安全確保に相応しい職場のあり方を確立すること。
(5) 定例訓練等、日常的な指導・訓練について、「競技会」等競争を煽るあり方や、「営業感覚」を求めるあり方を中止し、規程類の反復や事故例を中心として、運転保安を重視したあり方に変更すること。
(6) 運転士のミスや事故等に対し、日勤勤務にして、就業規則の書き写しを行わせる等の見せしめ的な「乗務停止」扱い及び、起きた事象と全く関係のない「見極め」を直ちに中止すること。
(7) 乗務員に対する、管理者による私服での裏面監視を中止すること。
8.勤務、要員及び乗務割交番作成関係
(1) 行路作成にあたって、拘束時間は、日勤行路は9時間以内、泊行路は20時間以内とすること。
(2) 泊行路の睡眠時間は、労働時間Aを除いて5時間以上を確保すること。
(3) 折返し時間は10分以上を確保すること。
(4) 1勤務を終了して次の勤務に就くまでの時間は、前行路の労働時間Aを確保することを最低基準とすること。前行路の労働時間Aが8時間を満たない場合は、最低8時間を確
保すること。
(5) 駅での停車時分の設定について、実態と乖離した「15秒停車」を解消すること。
(6) 3ヵ月間乗り入れていない線区を乗務する場合は、線見訓練を実施するよう、線見訓練に関する基準を設けること。
(7) 運転線区及び業務内容の習熟という観点から、各区各組の交番順序については、4週を限度とすることを交番作成の基準とすること。
(8) 教育、訓練、適性検査、研修等を実施するための要員を配置し、年休、休日が完全に取得できる要員体制をとること。
また、駅、検査派出に、異常時に対応できる要員を配置すること。
(9) 技術断層を解消するために、検修や保線職場をはじめ、技術系統の職場に、大量退職に見合う人数の新規採用者を配置すること。
(10) 乗客の安全確保のために、駅にホーム要員を配置すること。
安全運転−危険個所総点検運動を貫徹しよう
|