経団連「05年経労委報告」を弾劾する
労働運動の変革めざし05春闘にたちあがろう!
工場法以前に戻せ
《「攻めのリストラ」へと軸足をシフトせよ》《改革の手をゆるめてはならない》《労働基準法など工場法時代の遺物だ、潰してしまえ》──
昨年末にだされた日本経団連の「05年版経営労働政策委員会報告」はこう叫びたてている。
注: 「経労委報告」とは労働政策に関する一年間の財界としての基本方針、とくに春闘に向けた指針を示す報告書。
経労委報告がいう「工場法」とは1911年(明治44年)に制定された法律だ。ちょうど「女工哀史」の時代のことである。当時のあまりにも劣悪な、とくに女工や子供たちに一日十数時間も奴隷のような苦役が強いられ、労災が激発する状況のなかで、労災扶助や女性・子供の深夜労働の禁止が定められたのが工場法である。
日本経団連は、ついに「労基法など工場法の遺物だ。工場法以前に戻せ」と言い始めたのだ。
徹底した規制撤廃
経労委報告は、とくに労働分野における規制(労働者保護)の徹底した撤廃を強烈に主張している点で、これまでのレベルを大きく超えている。
いわく「労働時間法制の抜本的改正を」「派遣契約期間の制限等不自然な規制は撤廃を」「全てを当事者間の契約自由にまかせよ」「労働行政による規制的な指導は国際競争力の阻害要因」「産業別最賃制は廃止せよ」……
等々、要するにに8時間労働制をはじめ、一切の規制を撤廃しろと、政府に要求しはじめたのだ。
それにかえて「企業の労使自治」という言葉が繰り返し登場する。つまり法による規制や行政指導による規制は全て撤廃し、何時間労働者を働かすのか、どのように働かすのかかは、全て「労使自治」に委ねるべきだというのだ。労資関係など近代以前の状態に戻せと言い出したのである。
我に自由を与えよ
この間、あまりにも酷いサービス残業の横行などに対し、労働監督行政が賃金の支払いを命じるような指導を何件か行なったことにまで噛み付いて「企業ごとになんら問題なく対応がなされてきた事項についてまで、労使での取り組み経緯や職場慣行などを斟酌することなく、指導監督を強化するといった例が多く指摘されている。監督行政全般に企業側は不信を抱いている」という書いているのだ。企業が違法行為を行なったことに対する監督にまで、開き直って「泥棒をして何が悪い」というわけだ。まさに異常としか言いようがない。だがこれは、日本資本主義の末期症状に他ならない。
別な所では「正社員」「非正社員」「ベースアップ」という呼び方・言葉そのものを無くせと主張する。奥田が主張するように「9割の労働者を非正規雇用化する」「賃金を発展途上国並にする」という方向に向けて、企業に一切の自由を与えよ、とばかりに、弱肉強食の論理を全面的に解き放とうというのである。
05春闘に決起を
大民営化攻撃
▼ さらに経労委報告は「民間にできることは民間に委ねる原則を徹底せよ」「身分のあり方を含め、国家公務員・地方公務員制度の抜本的改革を望む」等、大民営化攻撃を煽りたてている。だが「公務員は徹底してスリム化せよ、しかし治安維持のために警察官は増員せよ」というのだ。
社会保障制度改革
▼ 「自助努力をあくまでも基本として社会保障制度の一体的改革を行なえ」と、年金制度等のさらにめ抜本改悪が主張されている。基本的にはすべて「自助努力」という発想のもとに「年金は給付額をさらに5%下げ、財政とのバランスが崩れたら自動的に下げる仕組みをつくる」「消費税は07年度に10%とし、さらに段階的に16%まで引き上げる」「『社会保障個人会計』をつくり、給付を制限する」等が主張されている。
雇用、賃金
▼ 雇用や賃金に関しては、徹底した賃下げや賃金制度の破壊が主張されているのはもとより、「将来を期待する人」「専門能力の発揮を期待する人」「実務担当としての能力だけを期待する人」等、あらかじめその役割を決めて、それに相応しい処遇をすればいいと言っている。むきだしの階級社会にするということだ。そして、教育も始めからこうした階層分けにするという観点から教育基本法の改悪を断行せよというのだ。
東アジア経済圏
▼ さらに、報告の冒頭から「東アジア経済圏」をつくる以外に国家として生き残る道はないと宣言している。日本経団連は、昨年7月に「今後の防衛力整備のあり方について」という別の膨大な報告書をだしており、軍需産業の強化や武器輸出三原則の見直しなどを含め、強大な軍事国家としてアジアにのり出せと政府に迫っているのだ。
労働運動の変革を
それにしても、平然と「全てを労使自治に任せよ」などと言われているということは、現在の労働運動がいかにナメきられているのかということだ。財界の連中にのうのうとこんなことを言わせておくことはできない。今こそ労働運動の変革が求められている。05春闘にたちあがろう。
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