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11月労働者集会に向かって始動
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7月17日〜21日、サンフランシスコを訪問しました。一ヵ月間にわたって開催されるレイバーフェスタの企画のひとつとして「労働者、戦争と抑圧」と題された労働者の国際討論集会が開催され、そのパネリストの一人として招かれたのです。
また、昨年の訪米時に要請されて「俺たちは鉄路に生きる2」の英語版を作成し、また「ILWU物語」を日本語に翻訳して出版したこともあって、出版記念レセプションも開催されました。
アメリカではILWU(国際港湾倉庫労働組合)ローカル10や34、サンフランシスコ労働者評議会の呼びかけで、この10月にワシントンで、「ブッシュ打倒、ケリーもNO」のスローガンを掲げて、「ミリオン・ワーカーズマーチ」(百万人労働者行進)が計画されています。今回の訪米の最大の目的は、アメリカでのこの画期的な取り組みと、日本での11月労働者集会の成功に向けた討議を行なうことにありました。
実質4日間というわずかの期間でしたが、数多くの企画や討議の場、そしてストの現場にも参加し、ほんとうに実りの多い、そして私自身認識を新たにさせられた訪米でした。
何よりも驚いたのは、私たちが訪れたときにはすでに、11月集会への代表団の派遣について、多くの労働者の間で討議されていたことです。「20名くらいの代表団を派遣したい」と集会で提起したり、「飛行機のチケットを手配する予定です」と話しかけてくる労働者がいたり、サンフランシスコ労働者評議会のウォルター・ジョンソン事務局長らとの討論の場では、事務局長自身が、「飛行機をチャーターしてパラシュートで会場に飛び降りよう」と、冗談ををまじえながら11月集会のことを呼びかけてくれるなどという情況でした。 昨年の11月集会が思いもよらず、サンフランシスコの労働者たちに大きなインパクトを与えているのです。
これには背景があります。彼らが昨年11月集会に訪日した時期というのは、ILWUは、協約改訂をめぐる大闘争のすぐ後のことでした。ブッシュは、「9・11」の後、アフガニスタン〜イラクへの侵略戦争につき進む状況のなかで、アメリカ最強の労働組合であるILWUの解体に全力をあげます。そのために、ILWUが70年間守りぬいてきた労働協約(西海岸の全域港湾労働者について、労働組合が運営する雇用事務所を通さずに雇用・就労させることはできないことを定めた協約)を解体しようとしました。ブッシュは、この協約改訂闘争にタフト・ハートレイ法80日間ストを禁止する等の労働組合弾圧法)を発動し、海軍を導入する等の恫喝をかけ、闘いはまさに国家をあげた攻撃との闘いになりました。ILWUは、ギリギリのところでこの協約を守りぬきます。しかし一定の後退も余儀なくされます。
さらにはその後、オークランド港からイラクへの軍需物資輸送を阻止するためにピケットには、警察が木製弾で銃撃し、多くの重軽傷者・逮捕者をがでるという大弾圧が加えられます。
こうしたなかで、ILWUの最左派を形成するローカル10がだした総括は、「AFL-CIO(日本の連合)などの屈服・変質を下から打破していくような運動を組織しなければならない、そして国際的な労働者の連帯闘争を本気になって組織しなければ、この現状を突破することはできない」という提起でした。
こうした状況のなかで、動労千葉との交流が始まり、そして11月集会への参加があったのです。直面する課題への問題意識は、まさにぴったりと一致したのです。
また、アメリカでは大民営化攻撃が吹き荒れようとしています。何と国防総省(ペンタゴン)の業務まで民営化してしまおうという攻撃です。「民営化」が全世界で労働者の権利や雇用・賃金を解体する猛毒であること、これとの闘いが労働者の最重要の課題であることで、私たちの認識は完全に一致しました。そして、動労千葉が、小さな組合にも関わらず、国鉄の分割・民営化に真正面からたち向かい、今の団結を守って民営化反対闘争を継続していること、そしてそれだけでなく、日本の労働運動全体の再生や新しい潮流の形成をめざして闘いぬいていることに、大きな注目が集まりました。「俺たちは鉄路に生きる」を翻訳してほしいという要請も、こうした認識に基づくものでした。
こうしたなかでの討議や11月集会への参加を通して、相互に影響を与えあう関係が形成され、アメリカでは、ローカル10などの呼びかけで、ミリオン・ワーカーズ・マーチが提起されます。今、AFL-CIOは、これに賛同するな、参加するな、資金援助をするな、という指令をだして、制動に躍起となっています。しかしサンフランシスコの労働者たちは、「これはわれわれの闘いがアメリカの労働運動全体に無視できない影響を与え初めたことを示しているんだ」と胸をはっていました。
私は、ローカル10の最も戦闘的・中心的指導者であるジャック・ヘイマン氏に次のように訴えました。
「今私たちは二つの壁に挑んでいます。ひとつは、連合、全労連という日本の労働運動のナショナルセンターの幹部たちは、もはや労働組合とは呼べないほど屈服を深め、政府・資本と一体化してしまっている。これを下から打破することです。そしてもうひとつは、様々な労働組合がナショナルセンターの違いやイデオロギーの違いなどによって自ら壁をつくり統一行動が展開できていないという現状を打破することです。昨年の11月集会は、未だ小さな穴に過ぎませんが、こうした現状に風穴をあけることができました。今年はこれをさらにこじ開けたい」と。
ジャック・ヘイマン氏の返事は「それはすばらしい。お約束しましょう。その穴を打ち壊すために私がハンマーをもって参加しましょう」というものです。
国は違っても、闘う労働者の思いはひとつであることを感じた一瞬でした。
ILWUの労働者とは、昼食会というかたちで討論する場面があったのですが、驚いたのは「私たちはマルクス主義のベースがあるから国際連帯することができる」と胸をはっていうことです。
「ロシア革命のとき、アメリカも干渉軍を派遣したが、アメリカの港湾労働者はそれに抵抗してウラジオストックへの武器輸出をにヵ月間ストップさせた。その間に赤軍がウラジオストックを占領したので、私たちが送った武器は全部赤軍の手に渡ったんだ。私たちはチリの軍事クーデターのときも、米CIAが介入してニカラグアの左派政権を倒したときも物資の輸送を阻止した」と胸をはっています。一九三四年のサンフランシスコゼネストを始め、自らの闘いの歴史を心の底から誇りとしているのです。
初対面にも係わらずこのような議論がされること自体、私にとってはまさにアメリカの労働運動に対する認識を一変させるものでした。