保守三部門の外注化阻止へ【その3】
賃金・雇用制度を根底から破壊
JR東日本が昨年11月に発表した「ニューフロンティア21」(以下、「NF21」)=第二の分割・民営化攻撃の最大の中心軸が保守三部門(検修・構内部門、設備部門)の業務外注化でありこれにより保守業務のほとんどが外注化され、安全が根底から破壊されることについては前回までに明らかにしてきたが、今号では第二の分割・民営化攻撃が鉄道に働く労働者の雇用や賃金制度をも解体する攻撃であることを明らかにする。
「NF21」攻撃の中心が保守部門の外注化攻撃!
「NF21」の中での大リストラ攻撃として、2005年までにJR東日本の社員数を1万人削減するとしているが、その最大の攻撃が今回の保守三部門の業務外注化だ。現在JR東日本の社員数は7万5千人だとしているが、実際には1万人以上の出向者、NLP休職者などを除くと、鉄道本体で働いている労働者は5万4千人しかいないという状況になっている。そして、1万人削減のうち6千人を鉄道部門で削減するとしており、最終的に4万8千人で鉄道を動かすというのだ。
40歳をピークに賃金がダウン―西日本の新昇進・賃金制度―
しかし、「NF21」の中で提起されている内容は単なる1万人削減だけではない。「人事賃金制度の見直し」「雇用形態の多様化」「人事制度全体の再構築」を行うとしており、鉄道で働く雇用の問題、そして賃金制度など、労働者の働く場や生活をも破壊するような攻撃が行われようとしているのだ。
賃金については、分割・民営化以降においてもJRの人事・賃金制度に関しては基本給を中心にした賃金のあり方で、国鉄からの制度を引き継いで現在に至っている(「第二基本給」制度の導入や55歳以降の大幅な賃金ダウンの導入は、賃金破壊の攻撃であることは間違いない)。しかし「NF21」では、そこにも手を付けようとしているのだ。実際、JR西日本においては、昨年4月からすでに「新昇進・賃金制度」が導入されている。基本給という考え方をなくして年令給と職能給に分けている。年令給で言えば20歳台から30歳台では賃金が増えるものの、40歳頃をピークにしてだんだん減っていくというシステムだ。昇給についても5段階(A〜S)で各労働者を評価するという差別昇給制度となっている。JR東日本も、こうした賃金制度そのものを破壊する新たな制度を導入しようとしているのだ。
出向期間終了後は「転籍」狙う
一方、雇用の関係では、「雇用形態の多様化」「出向先基準の導入」などとして出されている。「雇用形態の多様化」についてはすでに日経連が@長期雇用グループ(必要最小限)、A技術力を活用するグループ)必要な時に雇用)、B雇用柔軟グループ(パートなど)と打ち出している方針をJR東日本でも導入しようというもので、すでに契約社員や派遣社員が導入されている。そして、「出向先基準の導入」という点で言えば、今年4月以降「57歳原則出向」が廃止になっているにもかかわらず、「NF21」の中でわざわざうたっているということを考えれば、「転籍」を狙っているということだ。実際、JR東日本が行おうとしている設備部門の外注化では、設備部門の内約2千人を出向に出すとしている。しかし、出向期間の3年が終わっても帰るべき職場がすでに外注化されてなくなってしまうため、最終的には「転籍」しかなくなるということだ。実際、設備関係の交渉の中では、国労に対して」将来的には転籍もありうる」と回答しているというのだ。また、検修・構内業務についても「シニア制度」により60歳に到達する労働者を順次再雇用し、その数に合わせて業務を逐次外注化するとしているが、当面は高齢者が大量に退職するという条件もあるが、この部分が抜けたあとは激減し、10年も続けるなど考えられないことだ。こうしたことからも検修・構内業務についても関連会社への「転籍」問題が発生することが考えられる。
グループ会社でも人件費等の徹底的な切り下げ
では、「転籍」になると賃金はどなるのかということになる。「転籍」になった場合は、もちろんその会社の基準になるが、JR東日本が「NF21」でうたっている中には「グループ会社の再編成」「不採算部門からの撤退」「業績基準の導入」などがあり、人件費(賃金、手当て、退職金等)やメンテナンスコストなどの徹底的な切り下げが行われようとしているなど、賃金の大幅なダウン、退職金もどうなるかわからいというところにまで行き着かざるをえないということだ。
全ての基準は株主価値の重視
こうした「NF21」に基づく第二の分割・民営化=保守三部門の業務委託が行われるその根本は、全てが「株主価値の重視」という観点から出されているという点にある。保守三部門の外注化にしても、鉄道を動かすために必要な要員配置などを考えるのではなく、株主に設けさせるためにのみ、こうした発送が生れてきたということだ。一切の基準が収益率・利益率に集約され、株主にどのくらい配当できるのかということだけに価値を見いだすというものだ。そして、結局は労働者の価値など認めようとせず、そのためには賃金や雇用すらも破壊しようというのだ。
歴史的大裏切りのJR東労組を解体しよう!
以上のとおり、「NF21」―保守三部門の業務委託が、JRで働く労働者の雇用・賃金制度そのものを根底から破壊するという、絶対に許すことのできないものだ。しかし、労働者にとって「百害あって一利無し」という制度をJR東日本と一体となって進め、丸呑みし、労働者に強制しようとする歴史的な大裏切りを行っているJR総連―東労組を絶対に許すことはできない。3月30日のわずか「100円」での検修・構内業務の妥結に続き、6月13日には設備部門も妥結している。
われわれは、このような大裏切りを行ったJR東労組を徹底的に弾劾して、解体するとともに、保守三部門の外注化阻止に向けて職場からの総決起をつきりだしていこう。
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