DC通信No.156 2011/4/3
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DC Earthquake Report No.9

牢屋にぶち込むべきは誰か?
              
 3月31日に行なわれた東電抗議デモで3人の学生が逮捕された。デモが東電前にさしかかった途端、警察官が「公安条令違反」のボードを掲げ、デモ隊に襲いかかって逮捕したのだ。何の衝突も起きてはいなかった。東電前は怒号で埋め尽くされた。しばらくの間、誰もが何が起きたのかすら分からなかった。警視庁ですら逮捕の理由を「デモをゆっくり進めた」としか言えない、闘いを圧殺するためだけの弾圧だった。だが、これが今日本で起きている現実だ。
 牢屋にぶち込まなければいけないのは、絶対安全だとウソをつき続け、その果てに何百万人もの生命を危機にさらしている東電幹部であり、経産省幹部であり、今も「健康に影響はない」などと言い続けているマスコミや御用学者たちだ!
 経産省、東電、原子力保安院、原子力安全委員会、日立や東芝といった原発メーカー、大学の原子力研究機関、放射線医学研究機関、財界に支配されたマスコミ、原発建設推進を掲げる連合など、全てがグルになって幹部人事を持ち回り、情報操作を行い、反対や危険性を訴える声を封殺し、研究機関は東電や国から多額の研究費を受け取り、誰からもチェックすらされることもなく原発建設を強行し続けた結果が恐るべき現実を招いたのだ。これは国家と資本の犯罪だ。この腐り果てた支配構造そのものを解体しなければならない。

国家と資本の犯罪

 何百万の労働者、農民、漁民が生きる手立てを失い、こんな現実がいつまで続くのかもわからない状況のもとで放射線の恐怖にさらされ続けているのだ。この日の闘いには放射能汚染で作物の出荷を禁止された農民も参加した。「菅や東電幹部と差し違える決意でここにきた」。福島では無農薬で作物をつくり続けた農民が自殺た。退避が命ぜられた20q圏内には千体もの遺体が放置されている。放射能汚染で運び出すことも葬ることもできないのだ。今も損壊した原子炉の冷却水が大量に海に放出され続け、それを止めることすらできていない。退避区域を拡大すればパニックが起きるからというだけの理由でまともな避難対策すらとられていない。今も福島第一原発で作業にあたっている東電の下請会社の社長は、「俺は原発は安全だと言い続けてきた。俺は地元を裏切り、社員を裏切り、日本国中を裏切ってしまった。でも、愚痴を言っている場合じゃない。ただ、俺たちは原発のヒーローにはなりたくない。当たり前のことをやっているだけなんだ」とうめくように言っている。
 めちゃくちゃな言論統制が行なわれている。「諸悪の根源は経産省であり国だ」という前福島県知事のインタビューを掲載した週刊誌の編集長は直ちに営業部に配転さされた。原発下請労働者の被曝死とそれを隠蔽する電力資本の工作を題材にしたコミックは直ちに連載を打ち切られた。
 忍従のときは終わった。今こそ怒りの声を結集し、闘いを組織しなければならない。社会のあり方の根本的な変革が求められている。こんなことは二度と繰り返してはならないのだ。

労働組合の犯罪

 今回の事態は、財界と一体化した労組官僚の犯罪も突きだした。連合は一貫として原発反対の声を封じ込めることに手を染めてきたが、昨年8月、「原発建設と原発のパッケージ輸出の積極的推進」を公然と打ち出した。全労連も「核の平和利用賛成」だ。大震災に対して連合が出した声明は「政府の迅速な対応に感謝する」というもので、原発事故にはひと言も触れていない。電力総連は、電力資本から受けとったカネで全国各地のあらゆる産別の組合役員を「原発見学ツアー」に組織し、 原発がどれほど安全かを教育するプログラムをやり続け、相次いでいた原発事故隠蔽に手をかし、「原発ジプシー」 と呼ばれる電力資本の下請け、孫請け労働者たちの被曝と被曝死を葬り去る役割を果たしてきた。
 自治労はかつては各地の原発反対運動の中心部隊だったが、公共部門の民営化攻撃に屈服して以降、それも完全に消滅していた。小学校では「わくわく原子力ランド」という教材が配られ、原発は素晴らしいものだという教育が行なわれている。しかし、日教組は、「政府とのパートナーシップ」を方針に掲げるようになって以降、こんなことに反対の声すらあげなくなった。

 これが日本の労働組合の現実だ。大震災以降の恐るべき現実の中、労働組合は何をなすべきなのかが問われている。労働組合を甦らせなければいけない。政府は怒りの声がマグマのように不気味に渦巻いていることを恐れ、全国民の融合、ナショナリズム、政治休戦を煽り、闘う部分を弾圧し、労働運動をさらに包囲しようとしている。だが、この状況の中で労使協調になおかつ手を染めていくことになれば、それは際限のないことになる。今こそ労働運動を甦らせなければならない。
 今回の大震災は、後のない経済危機、財政破綻の渦中で起きた。日本経済は崩壊し、国家財政は全面的に破綻するだろう。そしてそれは全て労働者への攻撃と政治反動に転化される。大失業時代がやってこようとしている。放射能汚染によって農業も漁業も全て壊滅させられる状況の中で膨大な労働者が解雇されようとしている。労働者・民衆の連帯と団結だけが最後の砦だ。それがどんなに困難な道でも、われわれはその一点にかけて闘いぬくことを決意している。

2011年4月3日
動労千葉国際連帯委員会


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