DC通信No.119 08/02/13 切り開いた国際連帯の展望 |
動労千葉新聞−新春座談会B
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清水 匠執行員 |
長田敏之書記長 |
山本弘行さん |
鎌形哲男君 |
長田 昨年10周年を迎えた11・4労働者集会は、青年労働者を中心に新しい参加者が飛躍的にのびました。今までやってきた労働運動が本物か偽物か、この時代に本当に通用する闘いだったのかが問われました。国際連帯も新たな展開を切り開いています。まず、11・4集会の感想をお願いします。
「自分たちの集会だ」─画然と変わった11・4労働者集会
清水 参加者自身が職場の中で資本や体制内的な労働組合の幹部たちとの闘いを開始し、それを持ち寄って集会になったという感じがものすごくします。だから集会全体に勢いが感じられた。背景に沖縄12万人集会とか青年労働者の闘い等があり、労働者は負けっ放しではなくて、いろんなところで反撃が起きているということが大きい。それらが絡みあいながら11・4集会に集約されていった。今まで動労千葉が訴えてきたことが具体的に実現し始めていると感じました。国際連帯も三里塚反対同盟との交流とか、教育労働者の国際連帯集会とか、大衆的な連帯がどんどん広がってきた。
山本 集会後に聞いたスティーブ・ゼルツァーさんの感想も私たちが受けた印象と非常に似ていて、とにかく若い人が多くなり、職場での闘いをひっさげて集会に参加している事が一つ。もう一つは、教育労働者との国際連帯が具体化したこと。これは画期的な事だと思います。アメリカでも職場からストライキなどの直接的行動をもって戦争に反対する、非正規職化の動きを労働者の団結で阻止していくことを大きく打ち出していて、それが11月集会とがっちりかみ合ったと言っている。共通する非正規職問題を国際連帯の一つの翼にしていかなければと言ってましたが、私も4大産別の決起─階級的労働運動の高揚が非正規職問題を包摂するような形で進んで行くと思う。そういう闘いを大きくしていくきっかけを11・4は明確につくったと感じています。
鎌形 私は仕事の都合で遅れていったのですが、会場に入ってすごい熱気を感じましたね。今までは参加者がいわば「お客様」だったのが、今回は自分の職場で闘いを起こした人たちが来ているから、これは「自分たちの集会だ」という雰囲気を感じました。特に若い人たちが入って変わってきましたよね。今回は本当に動いたな、形のあるものができてきた、とすごく感じました。
清水 単なる動員で来るのではなくて、何かそこに求めて集まってくる感じですね。
長田 動労千葉の労働学校で勉強した青年たちが職場で闘いをつくり出している。11月集会にそれが反映しているね。集会では、「全国に共同センターを、労働学校を網の目のように作ろう」と打ち出した。
山本 労働学校をつくる試みが全国で始まり出した。
清水 労働者が集まって話をする、議論することが重要だと思う。昔は地区労や青年協議会みたいな場がいくらでもあった。連合ができてそういう場がなくなって20年たった。もう一度そういうものを地域ごとにつくっていくことは大きいね。
鎌形 今は、ほとんどの組合が体制内労働運動で、資本と組合幹部が一体になってしまっているから、若い人たちは組合とは何かがわかんないですよね。俺たちの闘いは日本では過激派だとか言われるけど、韓国にいって、実は俺たちの闘いは当たり前で、それが普通なのだということがあらためてわかりました。
長田 むしろ資本や企業の方がめちゃくちゃ過激にやってきている。
鎌形 若い力は可能性がありますね。動労千葉の学校に来て体験して、職場で自分をさらけ出して労働組合はこうだと口にする。俺らが何十年かかったことを数年でここまで持ってこれる。労働学校の力は非常に大きいですよね。
長田 それだけおかれている現実が悲惨だからストレートにわかるんだよね。
山本 今フランスがそうです。一昨年は一旦国会で可決された法律をひっくり返すようなことまで起き、現在ゼネストで闘っている。労働者、労働組合が社会の中でどう動くのかが核心的な問題で、動労千葉がそのポイントを外さずに断固としてやってきたことが成功して、11・4集会が新たな発展を見せた。国際連帯の展開ももう一皮むけて動いていく可能性を感じますね。
反合・ 運転保安闘争は世界的にも共通する課題
長田 昨夏「俺たちは鉄路に生きる3」を発行したが、組合員が現場の闘いをストレートに語っていて結構人気になっている。動労千葉はすごいと言われるが、実際は苦闘しながら一つ一つ現場で闘いを創り上げてきていることがわかる。
山本 幕張事故の時、安全衛生委員会でATS付ける付けないのやりとりの記録を証拠にゴリゴリやった。ああいう闘いの積み上げをやっているんだなということがよくわかった。
清水 常に資本との緊張関係、闘っている関係がないとああいう闘争にはならない。
鎌形 当局と対等な位置にいますからね。
清水 事故は突発的に起きる。闘いはそこから入るが、その前段でどれだけの闘いをやってきたか、日常的な闘いをどれだけ積み上げるかですね。
山本 反合・運転保安闘争は世界的にも共通する課題で、イギリスでも新幹線の脱線という大きな事故が起きた。だけどRMTでさえ調査委員会は国の機関にまかしちゃう。独自で反合・運転保安闘争とまではなってない。アメリカのILWUも最近2ヶ月のうちに2回連続で死亡事故が起きているのに、動労千葉がやったところまで接近できていない。最近、その辺の考え方、路線を輸出しなくてはと思っている。それを理解してもらって共に闘うところまで持っていきたいね。「3」を読んで「俺鉄2」がわかったという人もいる。このハングル訳、英訳が必要かも。
長田 事故問題に労働組合として関わって闘いをつくってきた俺たちの経験は、社会的にもあまり例がない。事故は起きる要因が必ずあるんだよ。会社が営利優先で効率化=合理化を進めた結果、事故が起きる。その点を徹底的にあぶり出して、責任は当局にあるとハッキリと打ち出して闘いを展開していく。組合がそういうスタンスに立ちきって闘ったとき、組合員はそれでこそ俺たちの組合だと誇りに感じてくれますね。
新たな展望を模索する韓国労働運動─民主労総大会に参加して
長田 昨年で3回目になりますが11月10〜12日、ソウルでの民主労総大会に動労千葉から参加しました。鎌形さんは初参加でしたが、どうでしたか。
鎌形 行く前から期待してましたが、ハッキリ言ってそれ以上のものでした。日本では死ぬまで見られないような4万近い人の結集…ああいうデモは本当に見たことがない。実物を見てまずは感動です。大会は参加するのを阻まれたところも含めて、全体で6万人が闘っている。道路を10車線も止めて、あれだけの人が集まるのを見ると、社会を変えられると感じますよね。
山本 前夜祭は、イーランド前にどれくらい集まったの?
鎌形 何千と言っていました。3車線は止めてましたね。店はサッカー場の1階にあって、機動隊のバスで包囲して中に入れさせないようにしていた。闘う部分はいきなり機動隊のバスを壊していた。大会でもいたるところで激突。大会後のデモも何度も走った。携帯電話で連絡し合って何万という人を動かすんですよ。すごく組織的統制がとれていて、ああいう統率の仕方もあるのだとビックリした。一方で激突しているのに子連れで来てたり、歌や踊りもある。不思議な空間でしたね。
でも、民主労総もすごく悩んでいますよね。韓国でも公務員労働運動をつぶして労働運動総体を解体しようとしている。非正規職保護法とどう闘うのか揺れている。そんな中で、動労千葉はすごいと言ってくれるのですが。
山本 彼らは、将来韓国も日本と同じような状況になって、労働運動も体制内化するのではないかと考えている。そのとき動労千葉のように生き残って闘いを継続し、運動の心棒になれるかどうかという意味で、強い関心を持っているんだと思う。
鎌形 それは言ってました。民主労総本部は当初、前夜祭も屋内集会で終わらせようとしていたのを非正規職が次々と解雇されている中でそんなことでいいのかと、ソウル地域本部がイーランドに乗り込んで前夜祭をやったそうです。今の情勢の中でどう闘いをつくっていくのか民主労総本部とソウル本部が衝突しながら闘いをやっている。
山本 今年4月に労働法制が一気に変わる。スト権剥奪とまでは行かないが、核心的部分はストに入らせないということ。そういう労働法制の改悪への屈服と非正規職問題が渾然一体となって激しい分岐が起きている。
長田 日本も分割・民営化を機にあっというまに総評がつぶされて連合になった。それを民主労総もみている。ソウル本部は今たいへんな危機感をもって、自分たちの闘いをつくっていかないとダメだと感じている。
鎌形 韓国に行くと、民主労総20万の組織と、わずか400名ぐらいの動労千葉が対等なんですよ。闘っている労働組合とは国境越えた同じ労働者だと、対等の扱いで、どこにいっても「動労千葉だ」の声が聞こえてくる。ソウルに行ってあれだけ動労千葉が有名だとは思わなかった。
清水 分割・民営化から20年、長期間闘いながら、なおかつ負けてない、生き残って闘い続けているということを評価してますね。その上、労働運動を再生させようと11月集会のような新たな運動を組織している。彼らは自分たちと照らし合わせて動労千葉を見ているんでしょうね。
鎌形 でも民主労総は年齢層が若いですね。日本も若い力が必要だ。うちの組合も若い人を入れなくては。
労働組合の団結で戦争を止めよう─米・ 反戦会議に参加して
長田 10月20日、清水さんと山本さんの2人がサンフランシスコでの戦争阻止労働者会議に参加しました。また、昨年7月には山本さんが三浦半島教組の佐藤さんと訪米して「日の丸・君が代」反対の闘いを訴え、11・4集会の前日、日米韓の教育労働者が国際連帯集会をやるところまで交流も進んできました。教育問題は、帝国主義戦争という情勢の中で焦点になっていますね。
清水 この会議はILWUローカル10と34の主催で、ILWUが労働組合として招請したのはイギリスのRMT(鉄道、港湾、運輸労働組合。組合員7万人)と動労千葉です。アメリカ国内では西海岸のほか全国から、他にニュージーランド、カナダの労働者など参加者は200名以上。国際的な反戦会議として開かれました。RMTは労働党政権がイラク戦争に賛成していく中で反戦闘争に決起して労働党から除名され、それでもなおかつ闘い抜いている組合です。動労千葉の名は03年イラク開戦の時、春闘ストライキで反戦闘争も含めて闘ったことがインターネットで世界に知れ渡った。イラク戦争を行ったアメリカと、ブッシュを支持した英国と日本といういわば戦争する側の帝国主義国で、自国の帝国主義戦争に反対し闘っている労働組合が集まったことは大きな意味があります。
山本 今回訪米して感じたのは、アメリカの場合はイラク戦争との関係で労働者への攻撃が日本以上にストレートだということです。例えば「教育なんかどうでもいい」と。OEA(オークランド教組)の人が「学校の校庭には汚水が流れ出し、ネズミが走り回り、廊下は腐って穴が開いている」と話してました。戦争に何もかもつぎこんで教育にはほとんど金をかけない。そして「貧困を利用した徴兵」─貧しい人をターゲットにして戦争に連れて行く。あるいはビッグ3といわれるゼネラル・モータースやクライスラーでストライキが闘われたんですが、企業が医療保険を全て放棄して、膨大な労働者を無保険化しようとしている。むき出しの攻撃です。
戦争下で焦点化する教育
山本 OEAの教育労働者たちは、「軍事物資輸送阻止、米軍即時撤兵、学校や社会福祉のために資金を」のスローガンを掲げて港湾でピケをはった。ILWUが連帯してピケを越えなかったから港が止まった。教育労働者と港湾労働者の連帯がつくり上げた闘いです。10・20のスローガンで重要なのは「現場からの直接行動で戦争をとめよう」。その具体的な例としてこのOEAの闘いが集会に報告された。
清水 イラク戦争を始めて5年、アメリカ自身が疲弊している。全ての力をイラク戦争につぎ込んで、教育崩壊、学校崩壊という状況に入っている。それに対し教育労働者がこのままでは教育が守れないと起ち上がった。その根源に戦争がある。自分たちの闘いが即戦争との闘いとなっている。
山本 教育問題は移民の闘いとも絡んでいて、オークランド住民の6〜7割が移民。だから必然的に闘いが起きている。一昨年の移民労働者1千万人の決起以降、警察が突然工場にのりこんで親たちをメキシコへ強制送還し、子どもが取り残されるような事態が次々と起きている。ラティーノ(中南米からの移住者)とアフリカン・アメリカン(黒人)に対する差別・抑圧の問題、それに戦争がからみ合っている。ILWUも今年協約改訂の年を迎え、今の労働条件が守れるかどうかが問われている。支配階級の危機も決定的で、運動の分岐が生まれている。日米韓3つの国は非常に似ている。この情勢の中でILWUが動労千葉とRMTと結びついて、世界的な労働者の団結で戦争を具体的に止めていこうという呼びかけだった。
戦争と国内階級闘争が直結─11月集会が結びつけた
清水 その中でお互いが結びつき合ったのが11月集会だった。帝国主義の危機が進めば進むほど逆に国際連帯─団結は強くなっていく。その核心はそれぞれの国できちっと闘っていくことですね。どこかが闘っているから支援するのではなくて、それぞれが自国で闘って、なおかつ互いが結びついていく関係。今までは動労千葉を中心に韓米が結ばれていたが、これが三角形に結びつきつつある。これは労働運動にとっても非常に大きいですね。
山本 10・20の決議も「全ての参加者は自らの労働組合で職場生産点での反戦ストライキを含む可能な限りの闘いに起ち上がれ」が結論。ここも各職場からの闘いなんだ。
長田 動労千葉の原点もそこ。それがあるから繋がる。動労千葉だって次世代の労働者をつくっていけるかにかかっている。11月集会も現場に依拠して闘いをつくっていこうという部分が結集している。08年はそれを徹底的に発展させていきたい。
清水 職場での一つ一つの闘い、必死になって格闘してきたことが今となって世界と結びついている。原点である職場の闘い、組織拡大をあらためて決意したい。
鎌形 同感ですね。まずは自分の足元を固めて職場の労働条件をかちとって、組織拡大を第一歩から始めたい。
山本 これだけ国際連帯が発展しているので、闘いの触媒になればと。そのために粉骨砕身がんばります。