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進行指示運転の問題点C

信号に対する考え方の大転換、無線による指示、通告万能主義

 今号からは、「進行の指示運転」の具体的な問題点について触れていきたい。
 「場内に対する進行の指示運転」とは、場内信号機故障時に、代用手信号に代えて駅長等の進行の指示により運転することができるというもの
である。しかも、場内信号機が複数ある場合も、「故障した信号機から停止位置まで一括して指示する」としている。また指示の方法は、
@CTC指令が無線で指示する場合、A駅長が指示書にて指示する場合、B駅長が構内無線で指示する場合、C駅長が指令を介して無線通告する場合───という4つのケースが定められている。
 ここには重大な問題点、数多くの疑問点がはらまれている。

 信号に対する考え方の根本的転換!

 何よりも最大の問題は、この連載の冒頭にも結論だけは触れたとおり、「信号」や「信号機」に対する考え方を根本的に変えてしまったことだ。
 言うまでもなく、信号機が故障した場合は最大の制限を与える信号が
現示されたものとして取り扱わなければならない。つまり停止信号が現示されているものとして列車をその手前に停止させなければならない。
しかも場内信号機は絶対信号機である。だからこそ、代用手信号が現示されるか、その信号機が復旧するまでは、絶対に列車を動かすことはできなかったのである。
 これは単に形式的な問題ではない。言うまでもなく、信号機故障時には、列車の運行は混乱している。ほとんどの事故は輸送混乱時・異常時に起きている。だからこそ、運転法規に関する教育・指導では、「最大の制限を与える信号」という取り扱いを、進行・減速・注意・警戒・停止等の一般的な信号現示に関する取り扱いよりも先に置いて、何よりも重要な問題として教えてきたのである。

「進行の指示は信号にあたる」

 だが、今回の取り扱いでは、信号よりも「進行の指示」の方が上位に置かれることになったのだ。
 われわれは団体交渉のなかでもこの点を追及したが、JR東日本本社は、「進行の指示は信号にあたる」と平然と主張している。また、国土交通省令の「解説」なかでも「進行を指示する信号の現示と進行の指示とを対等なものとしながら……」と書か
れているのだ。
 「進行の指示」には4つの方法・ケースが掲げられているが、現実には、すでにこの間の合理化攻撃のなかで、多くの駅には駅長や駅長を代務して運転取扱いをすることができる者なおらず、どう考えてもほとんどは指令から無線で指示されることになるのは明らかである。
 要するにこれは、無線で指示・通告された場合は信号も無視してそれに従えということだ。無線による指示・通告万能主義である。信号が信号では無くなったのだ。

「絶対信号機という概念はない」

 しかも、JR東日本本社は団交の場で「絶対信号機という概念はない。絶対信号機というのは俗称に過ぎない」とまで言っている。
 言うまでもなく、場内、出発を「絶対信号機」としてきたのは、ひとつ間違えば、脱線や衝突など重大事故につながるからである。運転法規に関するJRの指導書でも「主信号機のうち場内信号機、出発信号機は『絶対信号機』と、また閉そく信号機は『許容信号機』と呼ばれる」と明記されてきたことである。それをこのように称してひらき直っているのだ。要するに自らがやろうとしてることに辻つまを合わせるためにこのように言うのだが、それが永年にわたる経緯を無視し、事実にも反した暴論だという以前に、安全対策部がこんなことを平然と平然と口にできるということ自体が信じられないものだ。安全に関する感覚が完全に崩壊してしまっているのだ。

 出発信号機まで!

 しかも国土交通省令では、出発信号機も同様の取り扱いができるとされており、JR東日本も「本来ならば出発信号機もこのような取り扱いができるが、今回は場内信号機だけにした」と、ことさに今回は場内だけにしたことを強調している。
 黙っていれば、いずれ出発信号機にも進行の指示運転が拡大されることは間違いない。
 現在は、出発信号機の場合は、代用手信号の現示のみならず、単線区間の場合はすべて、複線区間でも状況によって閉そく方式を変更しなければならないが、もし進行の指示運転が出発信号機まで拡大された場合、こうしたことも含めてどのようになるのか、ぞっとせざるを得ない。ことは深刻なのである。そうなればひとつ間違えばまさに正面衝突だ。
 実際、後に触れるように、信号に対する考え方を変えてしまった結果、「閉そく」や「防護する区間」という、安全にとって最も要をなす概念もあいまい化され、崩されてしまっているのである。

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