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サミットに示されたブッシュ戦略

世界経済が本格的不況局面に突入したことを発信した、ジェノバ・サミット!
 イタリアのジェノバで行われたサミット(先進国蔵相会議)は、資本主義の決定的な危機と支配体制の崩壊、経済のブロック化へと進む、暗黒の様相を呈して全日程を終了した。
 とりわけアメリカ大統領・ブッシュによる、そのブッシュ戦略−ユニラテラリズムによる、世界最強の軍事力を背景とした戦争政策の発動という、これまでのサミットとは異なった経緯に終始したことが全世界に発信されるものとなったことは、報道の通りである。
 そもそもサミットとはG7(先進7カ国蔵相会議)として、70年代初めから開催されることとなったものだ。(近年、ロシアが加わりG8となった)その発足の契機となったものは、ドル支配体制の崩壊がある。それは、世界の兌換貨幣としてあったドル基軸体制−世界の流通貨幣の基軸が、不兌換貨幣=変動相場制となったことが発端となっている。ゆえに、先進7カ国の蔵相が1年に1回集まって、貨幣価値の基準を確認することによって、流通の貨幣相場を決定していくことが必要となったことに起因するものだ。
 つまり、この貨幣制度は通用します、これにより帝国主義大国がどうやって世界を支配するか、ということを確認する場となったものである。平たく言えば、このことなくして貨幣価値は紙クズになってしまうということであり、対立の調整をしなければならなくなったということだ。又、これにより安心して金を使って下さいということを示している。
 その背景には、アメリカのベトナム失陥、ニクソンショックがあったことは言を待たない。ここに世界の経済情勢は、世界的な不況局面に突入したということであり、この観点から世界情勢を見なければならないのだ。

帝国主義列強が分裂していることを世界に示したサミット!
 今回のジェノバ・サミットの決定的な特徴は、G8が一致しないことが明らかになったことである。これはとりわけアメリカ・ブッシュ戦略によっている。
 世界最大のCO2(二酸化炭素)排出国であるアメリカは、世界環境保全に関する、「京都議定書」を批准しない。さらにはミサイル防衛計画を実行段階に移すことを表明した。
 世界的な環境問題の保全に向けた「京都議定書」は、その全人類的な基準から言っても、批准すべきものであることは明白なものだ。たとえその内容や基準に検討すべきものがあったとしても、現今の環境破壊や地球温暖化という観点から言っても、速やかな対策が必要不可欠と断じざるを得ない。
 しかしながらアメリカは、その自国の利益−軍産複合体の要請を最優先し、ユニラテラリズムという、一方的決定主義、単独決定主義を主張したのだ。このアメリカの歴史的な転換とは、その国際的優位性を生かして外交・防衛政策を貫徹するというものだ。そして、ミサイル防衛計画を通せば、核不拡散防止条約も事実上の廃棄に等しくなる。実際、アメリカは条約からの離脱さえ口にしている。ITバブルからの深刻
な危機−以前からあった双子の赤字、ここからくる21世紀的砲艦外交、まさにブッシュ戦略によるアメリカの歴史的転換点となったジェノバ・サミットという視点を持たなければならない。
 このアメリカの歴史的転換を示すものとして、軍産複合体を代表する米・ランズフルトは、「いかなるアジアの潜在的覇権国と対決する」ことを表明し、中国と日本を視点に置き、特に中国をターゲットにする方向に舵を取ったのだ。これは中・台紛争が起こったら介入することを宣言したに等しい。それに匹敵するように軍事予算についても、クリントン時代から転換をするなど、露骨に利害を主張する本質的転換を行ったのである。
 90年代はじめ、アジアで覇権をとったものが世界を制するとまで言われたが、ここにアメリカによる力の支配−相手が従うか従わないかということを、実質的に軍事力という武器を以て示していると見なければならない。
 以上、みてきたように世界の資本主義列強は、正に一触即発の危機の時代に突入した。今後、世界経済は、アメリカの歴史的な戦略の転換、統一通貨ユーロに象徴されるように、ブロック化の様相を呈し、ますますその経済圏の確保と増強へと進み、危機を深めることは必定だ。

憲法改悪をターゲットとした、「骨太の改革」
 このジェノバ・サミットには、日本から小泉が出席している。小泉は、首相に選出される以前〜以降にわたって、次々と歴代自民党首相がタブーとされていた領域に、露骨にその反動的発言を発している。
 憲法改悪を明確なターゲットとしたその発言の数々−自衛隊を軍隊として位置づけるべき、集団的自衛権の行使、「つくる会教科書」に対するアジア各国からの修正要求の拒否、等々、枚挙にいとまがない。
 ガイドライン関連法案の成立から実質的にはじまった、日本の軍事大国化路線−これにそった有事立法の制定策動など、これもブッシュ戦略と同一の地平から発動されている。
 小泉の言う、「骨太の改革」の骨子がここにあり、軍事、経済だけでない社会保証制度や司法改革にまでその挙手は及んでいる。明確な戦争推進国家を目指していることは明らかなことであり、8月14日に強行された靖国神社の参拝等、戦略的に考えている。戦後の歴史的転換−憲法改悪が明らかにターゲットとなったのだ。これと対決できる労働運動の新たな潮流を形成しなければならない。