生きる権利奪う労働法制改悪

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03春闘に立ち上がろう

今開かれている156回通常国会は、労働者にとって大変な歴史の転換点になろうとしている。これまで労働者が血を流し、汗を流してかちとってきた権利、 労働条件、社会的な地位をすべて解体してしまうような法案が、一斉にこの国会だされようとしている。労働者の生きる権利そのものが脅かされるような時代が 到来しようとしている。こうした攻撃との対決が03春闘の最大の課題だ。

「解雇ルール」の法制化

労働基準法に労働者の解雇に関する条項がもり込まれようとしている。新聞では「解雇ルール」などと報道されているが、実際は、「使用者は労働者を解雇することができる」と、「解雇の自由」を労基法に明記しようというのである。
労基法は、少なくとも企業が最低限守らなければならない労働者の労働条件と権利を定めた労働者保護法だったはずだ。それを、労働者の首切りは自由だとい う法律にしてしまおうといのである。つまり労基法という法律の性格全体を根本から変えてしまおうとする大変な改悪だ。

有期雇用契約の拡大

有期雇用契約や裁量労働制の拡大が準備されている。
現在の労基法では「期間の定めのない雇用」=終身雇用があくまでも基本である。その上で例外的に、パートやアルバイト、派遣など、1年以内の期限で有期雇用契約を結ぶことができることになっている。
今度の改悪では、3年という有期雇用契約を認める、専門職では5年という契約を認めるという法改正が準備されている。雇用契約の基本を逆転し、終身雇用ではなく、有期雇用にしてしまおうというのだ。
3年とか5年で雇用契約を結び、何度か更新されたとしても、40歳過ぎぐらい雇い止めになるような、事実上の若年定年制のような状況が社会全体を覆うことは間違いない。
さらに、このような有期雇用制度となった場合、労働者はつねに何年かごとに雇用契約を更新できるか、雇い止めになるかということに直面するわけで、どん な待遇をされても物も言えないという状態におかれ、あるいは契約更新の際に賃下げを条件にされても受け入れるしかなくなるなど、労働者は耐えざる労働条件 の悪化と、企業の側からの攻撃にさらされて、抵抗する手段、団結する条件を失うことになる。

裁量労働制の緩和

裁量労働制とは、これだけの仕事をして8時間労働と見なす、というみなし労働制で、適用されれば時間外労働という概念がなくなる。1日8時間、週40時間という労働時間の規制を潰してしまうということだ。
アメリカではすでに、企業の管理者層だけでなく、鉄道運送業、外勤セールスマン、自動車運送業などにこの制度が適用されている。狙いは、超勤を払わない で長時間労働をさせ、人件費コストを削減するということだ。政府や財界は、将来はこのような方向にもっていくと明言している。

労働者派遣法の改悪

さらに、労働者派遣法の改悪が画策されている。現在は「物の製造」業務への派遣禁止など一定の制限があるが、今回の改悪では、どんな業種でも、基本的に派遣労働を全面解禁しようとしている。
派遣労働者は現在175万人。その平均賃金は186万2000円で、JRのような正規雇用の労働者の賃金と比べると三分の一以下である。
こうした状況の中で派遣労働が全面解禁になった場合、企業が正規雇用の労働者など雇うはずはない。これまでのレベルを遥かにこえるアウトソーシングや大 リストラが吹き荒れ、ぼう大な労働者が、派遣に置き換えられていくことは間違いない。こんなことを許したら、日本の労働者の平均賃金は、瞬く間に20年 前、30年前の水準に落とされていくことになる。

職安法の改悪

また、派遣法と一体で職業安定法も改悪されようとしている。労基法には中間搾取をしてはならないという規定があり、本来ならば、職業 紹介は公共職業安定所以外がしてはならないものである。しかし、派遣会社自体が、要するにピンハネするということで、有料の民間職業紹介事業のようなもの だ。「職を探すなどということは自己責任だ、国や自治体が仕事を見つけてくれるなどという考え方はもう通用しない」という論理で、ハローワークなどは基本 的にリストラしてしまおうという方向にある。基本的な考え方は自己責任論であり、社会の全ての競争原理・市場原理を導入するということだ。

社会全体が覆る

「解雇ルール」の法制化、有期雇用契約拡大、派遣労働の全面的解禁という三点セットで労働者の雇用・賃金・権利を根本から解体しようとしているのだ。
しかもその影響は、雇用や賃金破壊だけにとどまるものではない。社会の土台をなす労資関係が覆されるわけだから、社会全体がおかしくなるということだ。民主主義と呼ばれてきた社会のあり方、年金・医療など社会保障制度をはじめ、すべてが覆ることになる。

雇用保険法の改悪

その他にも、雇用保険法の改悪で、失業手当の給付金額も、給付期間も大幅に減らしてしまおうという攻撃も準備されている。坂口厚生労 働大臣は「期間ギリギリまで失業手当をもらってから再就職するという不心得者がいる。それを排除するために支給期間を短縮する」と言っている。長年掛け金 を払っているわけで、60歳で退職したり、あるいは失業したりして、失業手当を受給するのは当たり前のことだ。にもかかわらずそれを、「不心得者だ」とい う発想のもとに改悪しようというのである。

年金制度の抜本改悪

年金についても、現在の年金制度の前提そのものを突き崩してしまうような抜本改悪が今国会で予定されている。
▼物価スライドの凍結解除による年金の引き下げ、▼掛金を20%まで段階的に引き上げる一方、支給金額は段階的に大幅に引き下げる、▼さらには、パート からも年金の掛金をとろうということが検討されている。しかもこれからは、一旦需給している年金も、既得権とはしないで、これらの制度にのっとって切り下 げていく制度にしようとしている。これらは、現在の年金制度の考え方の根本的な転換・解体に他ならない。
結局将来的には厚生年金など潰して、年額80万円程度の国民年金だけにしようというのが政府の基本方針だ。後は自己責任でやれというのである。そして国 民年金は掛金ではなく、取りっぱぐれがないように、消費税にしてしまおうという計画だ。すでに財界は「消費税を16%まで段階的に引き上げる」という方針 で一致し、政府に働きかけている。

税制の抜本改悪

「戦後初めての本格的な大衆増税」と言われる税制の抜本改悪が準備されている。配偶者特別控除を廃止し、所得税、住民税の大増税を強行しようというのだ。奥さんが扶養の場合、これだけで約4万~6万円の税負担増になる。
さらに、どんな零細企業や商店からも売り上げに応じた消費税を取り立てるという改悪、たばこ1本1円、発泡酒1本10円等、たばこ税・酒税が引き上げが画策されている。
問題は、こうして労働者からむしり取りった金を企業に回し、大企業を救済しようとしていることだ。大衆大増税の一方で企業減税を行い、また年収一千万円以上の高所得者は減税になる。
竹中などは、「金持ちがもっと金持ちにならなければ貧乏人を助けることはできない」と公言している。しかし金持ちが貧乏人を助けたことなど、ついぞ聞いたこともない。

4月からの大収奪

最後に、すでに立法化されており、この4月から実施される大変な大衆収奪について触れたい。
ひとつは、年金と健康保険料の総報酬制ということがはじまる。つまり夏季手当、年末手当からも掛金をとるということだ。この夏から、期末手当の約11% が、厚生年金と健康保険料でもっていかれことになる。また、4月から健康保険料の自己負担が3割負担になろうとしている。とにかく徹底的に搾りとり、奪い 尽くそうという攻撃だ。

攻撃の本質は何か

生きる権利そのものが

このような労働者への全面的な攻撃は、一言で言えば、労働者の生きる権利そのものが問題になるような時代がついに到来しようとしてい ることを示している。これまでわれわれが経験したことのないことだ。生きる術を奪われ、食っていけなくなる労働者・家族がぼう大に街に吐き出されようとし ている。それを承知で、これらの改悪を今国会で強行しようとしているのだ。
とくに、すべての労働者を不安定雇用に突き落とす、最後の扉があけ放たれるような事態が、この春闘の過程で始まろうとしている。こんなことを許したら、わずかの間に日本の労働者の賃金は、まさに「発展途上国並み」まで、突き落とされることは間違いない。

大反乱の条件は整った

しかしわれわれがここではっきりと見すえなければならないことは、危機はチャンスだということだ。この情勢は、怒りの声を結集し、闘う労働運動を再生する条件がいよいよ整ったことも意味している。

労働者が生きていけなくなり、やり場のない怒りの声、平気で賃下げや首切りを行なう政治や企業に対する憤り、自殺に追い込まれるような絶望、こうした一 切合財が噴き出す過程がはじまろうとしている。これは、連合や全労連が資本と一体となって労働者を支配するという枠組み自身が全部崩れるというこでもあ る。労働者の意識の劇的な変化、あるいは大反乱の条件が出そろったということだ。この時に、闘う労働組合が存在し、団結するすばらしさを訴え、団結すれば 世の中を変えることができるということを訴え、労働者が展望を見いだすことができるような、力ある大衆的な闘いの核をつくりあげることができれば、必ずそ こに火花が起きる。われわれはそのような闘いとして03春闘に起ちあがらなければならない。

社会のあり方を問う

われわれは、労働者を犠牲にしてしか生きることのできないような社会のあり方そのものが根本的に間違っているのだということを真正面 から言いきらなければならない。そして労働者の団結した力と闘いこそが生活と権利を守り、戦争を止め、社会を変える力を持っている。労働者は社会の主人公 であり、その団結した力は、歴史を動かすことができるのだということに確信を持とう。  世界中で労働者がたちあがり、新しい時代をつくりだそうとしてい る。われわれも黙ってはいられない。ともに03春闘に起ちあがろう。

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