韓国大邱地下鉄大惨事について(上)ワンマン運転が大惨事引き起こす

韓国大邱中央路駅における地下鉄大惨事について(上)

自らの課題として

韓国大邱(テグ)市、地下鉄中央路駅で起きた大惨事は、決して他人ごとではない。日本での報道だけでは、大惨事に到った詳細な原因を 把握することはできないが、伝えられている事柄だけを見ても、問われている課題がわれわれが直面している安全上、運転保安上の課題とまさに同じであること に驚かされる。
われわれはこの惨事を自らの問題として考え、運転保安確立に向けて闘いを強化しなければならない。
韓国民主労総、韓国労総、韓国の全国鉄道労組の声明、闘争指針を紹介するので、ぜひ運転保安確立に向けた闘いの参考にしてほしい。
韓国の全国鉄道労組の仲間たちは、「構造調整」の名による安全の解体を弾劾し、「現場人員増員、外注委託化撤回、労組活動保障、解雇者復帰、損倍・仮押え完全撤回」に向けて、闘いに起ちあがっている。この闘いに連帯し03春闘に起ちあがろう。

ワンマン運転が大惨事引き起こす

声明が何よりも問題視しているのは、「一人乗務制」である。韓国では車掌省略が当たり前のことになっているという。
今回のような不測の事故の場合、火災が列車後部で起きたことも含め、運転士は一体何が起きたのか、直ちには把握することすらできなかったに違いない。し かも本来、列車防護や乗客の安全対策、誘導等を行なうべき車掌はいず、指示を受けるべき指令は現場を全く見ていないという状況のなかで、運転士一人で万全 の措置をとることなど到底不可能なことだ。
全国鉄道労組は「最低車掌さえいれば、ドアの手動開閉とバッテリー使用が円滑に行なわれ、今回のような大惨事に至ることはなかったであろう。車掌さえい れば、運転士一人で指令とし交信していて乗客が死んでいくというような状況が放置されることはなかったであろう」と指摘している。まさにそのとおりだ。

責任転嫁を許すな

乗客のみならず、判明しているだけでも大邱地下鉄労組の労働者、委託従業員労組の労働者6名が亡くなっており、未だ行方不明者もいるという。必死で乗客の救助にあっていたであろうことは想像にかたくない。また運転士ら7名が逮捕され、責任を追及されているという。
事故を起こしたくて起こす鉄道労働者など誰もいない。だが、何かあれば生命を失い、その場から逮捕されるのがわれわれの置かれた現実だ。
日本での新聞報道や別掲の各声明を見ても、運転士には断じて責任がないことは明らかだ。責任は安全を無視・軽視して無謀な合理化、要員削減をおし進めた 鉄道庁・公社当局にこそある。鉄道に働く労働者にとって、安全問題は万国共通の課題だ。労働者への事故責任の転嫁を許してはならない。

他人ごとではない

この事態は日本でもまさに他人ごとではない。日本でも規制緩和等を背景として、ワンマン運転がどんどん拡大されているのが現実だ。
日本の地下鉄でも大江戸線など最近開業した地下鉄は全てワンマンで長編成を運転しているのが現実だ。
JRでもワンマン運転が拡大されようとしている。
そればかりではない。すでに国土交通省令には、一人乗務どころか「ノーマン運転」「運転士レス運転」を行なう際の必要条件という条文さえもり込まれてい る。「ノーマン運転」とは、全くの無人運転をさす。「運転士レス運転」とは、無人運転が可能な車両に、運転士ではなく、緊急時のための防護要員だけを乗せ て運行することを言う。省令上は、こんなことまで可能とされているが現実である。
今回の事故は、安全問題までを競争原理に委ね、利潤追及のみを至上とする経営姿勢と、社会全体を覆うこうした構造改革-規制緩和攻撃が、どれほどの安全の構造的崩壊をもたらすかをまざまざと示している。

注意して運転せよ

さらに新聞では、指令員が「注意して運転せよ」という指示で、対抗列車を駅に進入させたことが報じられている。列車火災が起きている状況のなかへ、指令は「注意して運転せよ」というあいまいな指示で列車を進めてしまったのだ。
現場に必要な要員がいない状況のなかで、指令の指示が万能視されるという現実。しかし指令が見ているのは無機質な制御板だけで、現場では実際に何が起き ているのかは何もわからない。さらに列車を止めれば自らの責任になるという心理が当然働くから、何か異常が起きていても、「注意して運転せよ」というよう なあいまいな指示が乱発される。そして最終的には運転士の判断だけに一切がまかされる。───こうした現実は、まさに今われわれが直面し、問題視している ことと同じ問題だ。

「指令万能」の横行

やはり規制緩和と、駅業務の部外委託-大合理化を背景として、無線での指示を万能とする発想が大手をふってまかり通っている。ついには、「場内信号機に 対する進行の指示運転」のように、「進行の指示は信号にあたる」と称して、絶対信号機であったはずの場内信号機も、指令からの進行の指示があった場合は無 視をして列車を進めろ、という規定改悪を行なうに到ったのである。
だが、われわれが警鐘を鳴らしてきたとおり、それからわずか3ヵ月で、5本の列車に対して、連続して信号暴進をさせるというとんでもない事態が起きている。
西日本では、触車事故の負傷者を救助中の救急隊員が列車に轢かれてて死亡するという事故が起きている。このときも指令は、救助中であることを知りなが ら、「注意して運転せよ」という指示で、後続列車を運行させたのだ。しかも、その無線連絡は、騒音によって直前まで運転士には伝わらなかった。  【つづ く】

◎韓国民主労総声明(2003年2月23日)
大邱惨事を招いた一つの原因-「1人乗務制」の改善を

1,民主労総は、改めて大邱地下鉄惨事の犠牲者の冥福を祈り、再発防止対策の次元にたって、今回の事故の無視できない原因として浮かび上がっている「関士1人乗務制」を何としても改善するよう求める。

2,これまで明らかになった惨事の原因は非常に複雑であり、対策も総合的でなければならないであろう。しかし責任をとると 言えば再発を防げるわけではない。燃えない素材で列車を造ること、通信体系をたて直すこと、避難路を正確に確保することなど、現在検討されている対策とと もに、何としても解決しなければならないことこそ、まさに「機関士1人乗務制」である。

3,大邱地下鉄は車掌を廃止し、機関士1名で列車を運行してきた。予想しえない事故が瞬時に発生した状況の中で、1人で数 百名の安全を引き受けるのは不可能である。1人乗務制で事故を予防し、事故に最も賢明に対処するのは不可能だ。機関士1人で列車の運行、指令との通信、乗 客の安全措置、ドアの制御を行なわなければならず、非常事態が起きればその全てを1人で完璧にこなさなければならない。労働者はこれに対して「非常事態に 1人だと、安全措置をとれば通信ができず、通信を行なえば安全措置をとれない。もし2人いれば、乗客保護とドア扱いは機関士とは別の者が行なうことがで き、それだけ措置は容易となり、非常時の対応も楽になる」と言っている。大邱地下鉄だけでなく首都圏の地下鉄全般が1人乗務制であり、最近は一般鉄道まで も1人乗務制を推進している。

4,地下鉄公社と鉄道庁は、98年から構造調整の名で費用を削減するために、「機械化・自動化」されたという理由をつけて、2人だった乗務員を1人に減らした。近くの日本をとってみても、1人乗務は旅客が多くない区間に限って制限的に施行されている。

5,すべてを安く、早くしようという経済理論は、総体的な安全不感症中毒を招き、ついに取り返しのつかない大惨事を引き起 こしてしまった。数日前、湖南線の保守工事中に7名の労働者が列車に轢かれて死亡したのも、経済理論で鉄道人員を大幅に減らし、保守業務をすべて外注化し たことをぬきには説明できないことだ。いわゆる構造調整を掲げて乗客の安全と労働者の生命をおろそかにしてきた誤った政策を全面的に再検討しない限り、安 全不感症を実際に払拭するのは困難な現状にある。鉄道労組が、21日から4日間 「安全運行実施週間」を設定しているのはまさにこうした理由からである。大邱惨事を契機に「1人乗務制」をはじめ、乗客と労働者を害する誤った現実を改善 する実践措置が取られるよう切に期待する。

◎韓国労総声明 (抜粋)
大邱地下鉄惨事犠牲者に心からの哀悼を表します

 私たちは政府の無分別な人減らし式構造調整により、ワンマン乗務と絶対人員不測の状況で、事故発生時に初動措置をとれず犠 牲者が大きくなった点を指摘しないわけにはいかない。さらに市民の安全を度外視した構造調整によって人命被害を大きくした当局の行いに嘆きと怒りを禁じえ ない。
政府と大邱市は、今度の大邱地下鉄大惨事を契機として、市民の安全を脅かす人員削減中心の構造調整を中断することを要求する。また今度の事故により人命 被害が大きかった原因を性格に究明し、再びこのようなとんでもない惨劇が発生しないように事故に備えた徹底した対策を樹立することを要求する。
あわせて事故にあった犠牲者と遺族、負傷者に十分な補償と治療がなされるよう万全を尽くすことを要求する。

韓国 全国鉄道労働組合  中央争対委闘争指令51号 (2003.2.20)

 現場人員増員! 外注委託化撤回! 労組活動保障! 解雇者復帰!損倍・仮差押え完全撤回に向け、全国安全運行実践を力いっぱい展開するよう指示する。
◎全組合員は2月21日14:00~18:00まで、23、24日13:00~21:00まで全国安全運行の実践に突入する。
◎全組合員は21日09:00別途指示があるまで闘争服を着用する。
◎全組合員は21日から対国民ステッカー宣伝戦を進める。
◎3つの整備廠は全国から全国安全運行実践への突入時、行動指針に従 ││  い、22、23日の両日、ソウル、大田、釜山の該当地区に全組合員を結集さ││  せる。
◎各拠点駅と地区および支部状況室は、安全運行実践期間中、1時間の間隔で中央状況室に報告する。
◎全組合員は弔意リボンを着用する。
・大邱地下鉄惨事犠牲者哀悼期間は2月28日まで
・各地本と支部は犠牲者および遺族を支えるための活動を展開する。