DC通信No.76 05/09/16
鉄建公団訴訟判決に対する動労千葉の見解

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鉄建公団訴訟判決に対する動労千葉の見解

(1)

 昨日、国労闘争団の仲間たちが提訴した鉄建公団訴訟の判決がだされた。
 判決は、国鉄が国労組合員らをJRの採用候補者名簿に登載しなかったことを、国労に所属していることを理由として、採用基準を恣意的に適用し、勤務成績を低位に位置付けたことによる不法行為であると判断した。ところが、東京地裁民 事36部は、二重三重の「理由」を張りめぐらして、 90年3月の清算事業団からの解雇を「有効」とし、さらにはJRに採用されていれば受け取ることができたはずの賃金相当額等の請求についても斥けたのである。

(2)

 判決は第1に、「再就職促進法の失効時には、事業団と事業団職員との間の雇用関係も当然に終了することが予定されていたというべきであり、(90年3月の清算事業団解雇は)合理的な理由があり、有効である」という。
 第2に、国鉄が採用差別を行なった以上、事業団は原告らを地元JRに採用させる義務を負うという原告たちの全く正当な主張に対し、判決は、「JR各社は雇用契約締結の自由を有しており、再就職促進法は、事業団職員を優先的に雇い入れるようにしなければならないと規定してはいるものの、義務付けていない」と言い、他方事業団も「組合差別を行なったか否かに係わらず、原告らに対し、地元JRに採用させる義務を負っていたと解することはできない」とした。
 そして第3に、不当労働行為なかったと仮定しても、「原告ら全員が地元JRに採用されたはずであるとの証明はいまだされていない」というのである。
 さらには、国鉄分割・民営化の過程で吹き荒れた嵐のような不当労働行為の責任についても、それが不採用〜清算事業団解雇をもって完結する一連の行為であるにも係わらず、「時効」の名の下に全てを切り捨てた。
 そして判決は、「国鉄から違法に不利益取扱いを受けたことで、正当な評価を受けるという期待権を侵害された」として、1人わずか500万円の損害賠償金の支払いだけを命じたのである。
 しかも、297名の原告のうち5名はそれすら拒否された。理由は「停職6ヵ月以上または2回以上の停職処分を受けた者」「昭和61年度末において年令満55歳以上の者」を採用候補者名簿に記載しなかったことについて、その基準自体は明確なものであり、合理性を有するからだというのである。

(3)

 結局、この反動判決の本質は、国鉄改革関連法のもとでは、採用差別があろうとなかろうと、JRへの採用を拒否された1047名の雇用や権利が回復されることなどないのだということを宣告したに等しいものだ。
 こんな判決がまかり通ったら、郵政をはじめ、社会全体を呑み込むような規模で吹き荒れようとしている大民営化攻撃の渦中で、民営化された新会社への移行をめぐり、いかに差別しようが、排除しようが、どんな不当労働行為をはたらこうが、500万円払えば全ては免罪されることになる。その意味でこれは、民営化とその過程での膨大な労働者の選別・解雇、労組破壊攻撃を容認するために仕組まれた政治的反動判決であると言わざるを得ない。しかも、それがくやしかったら、自分は絶対に採用されていたはずだという、証明不可能なことを証明してみろというのだ。
 さらにこの判決は、解雇金銭解決の法制化や、不当解雇や不当労働行為事件で、労働者・労働組合側に立証責任を課そうという動きなど、画策されている労働組合法改悪攻撃を先取りし、それに先鞭をつけようとする反動判決でもある。

(4)

 そればかりではない。「停職6ヵ月以上または2回以上」という不当な基準を合理性を有するとしたことは、本事件の5名のみならず、明らかに動労千葉争議団9名への採用差別を切って捨てることを意図したものだ。
 処分歴について、採用候補者名簿作成の基礎資料とされた職員管理調書への記載が「昭和58年4月以降」とされたのは、国鉄分割・民営化の手先となった旧動労を救うためであった。
 さらにこれは、二重の処分が行なわれたことを意味する。そもそも、労働処分を職員選定の重要な要素とすること自身が不当極まりないものだ。
 われわれは、断じてこのような判断を許すことはできない。

(5)

 1047名の解雇撤回に向けた19年に及ぶ闘いは、「国家」という巨大な壁にたち向い続けた困難の連続であった。しかしわれわれは、98年の5・28反動判決を乗りこえ、「4党合意」による闘争圧殺攻撃を乗りこえて、今日まで不屈に闘いを貫いてきた。われわれは、今再び闘いの原点に還り、9・15反動判決を乗りこえて、反撃に起ちあがる決意である。
 昨日の判決から透けて見えてくるのは、19年に及ぶ不屈の闘いに追いつめられ、あえいでいる政府−裁判所の姿である。
 闘いはこれからだ。1047名の解雇撤回闘争は全ての労働者の未来をかけた闘いだ。小泉政権は恐れているのだ。高鳴る怒りの声が1047名闘争を中心に結集し、溢れだすことを。19年間の勝利の地平に確信をもって、固いスクラムを組み直そう。われわれは、9・15反動判決を乗りこえて解雇撤回−JR復帰の勝利をわが手につかみとるために、労働運動の再生をめざし、全ての労働者の怒りの声の先頭にたって闘い続けることを決意する。


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