〝働き方改革〟の正体 ――雇用・労働・社会保障の歴史的転換との闘い 11・6労働者集会討議資料

はじめに

●安倍政権の「働き方改革」許すな 

「働き方改革は安倍内閣の次の3年間の最大のチャレンジだ」。安倍政権は、担当大臣まで新設し、厚生労働省の大がかりな組織改編まで断行して「働き方改革」につき進もうとしている。「働き方改革」とは何なのか? 「同一労働同一賃金の実現」「非正規という言葉を社会から一掃する」「最低賃金1千円をめざす」「時間外労働を規制する」等、耳ざわりのいい言葉が並べられている。しかし、現実に進められ、実行に移されようとしているのは、飾りたてられた宣伝とは真逆のものだ。
マスコミは、批判精神を失って安倍政権の応援団に堕している。せいぜい「実効性が問われている」と評する程度だ。ガス抜きのために発行されている一紙だけが「またしても、国民をペテンにかける壮大な詐欺が始まろうとしている」(日刊ゲンダイ)と書いているだけだ。安倍政権は、連合や全労連のスローガンを自らの政策として取り込み、その屈服につけ込み、逆手にとって労働者への全面戦争をしかけようとしているのだ。

●凶暴な攻撃としての「同一労働同一賃金」
安倍政権が言う「同一労働同一賃金」とは、生きていくこともできないような非正規職労働者の超低賃金を改善するということではない。正社員の賃金を非正規と同一の水準まで突き落とすということだ。しかもそれは、年功制賃金・定期昇給制度を最後的に解体する攻撃でもある。さらには、扶養(家族)手当等の生活給的要素をすべて解体することも意味している。扶養手当の廃止はすでに16春闘を期して開始されている。そして、最終的に行き着くのは、全労働者の「時給化」に他ならない。「CTS(千葉鉄道サービス)方式」だ。「無期雇用に転換する」と言ってすべての労働者を5年で選別のフルイにかけるだけでなく、最賃すれすれの時給制で働く「正社員」を生み出していく。一旦そんな労働者が生み出されたら、すべての労働者がそこに向って落ち込んでいくことは明らかだ。
安倍は、「同一労働同一賃金」の目標として、非正規職の賃金を正社員の8~9割までは引き上げなければならないかのようなことを言う。しかし、現に進められているのは、労契法の無期雇用転換条項(5年ルール)を悪用して、つねに最賃すれすれの「限定正社員」を大量に生み出していく攻撃である。つまり、安倍政権が掲げる「同一労働同一賃金」とは、全労働者の最低賃金化を狙う凶暴な攻撃なのだ。
「非正規という言葉を一掃する」は、全部非正規に突き落としてしまえば「非正規」とは呼ばれなくなるということを意味している。それを前提とした「最低賃金1千円」なら資本にとって天国のような条件だ。
つまり安倍政権の「働き方改革」とは、「正社員ゼロ(総非正規職化)・解雇自由」社会を生み出そうとする攻撃だ。労働基準法や労働組合法に最後の一撃が加えられようとしている。労働者の血と汗でかちとってきた労働基本権が根底から覆されようとしている。雇用や労働者の権利に関する従来の「常識」がすべて覆されようとしている。それは、国鉄分割・民営化以来の社会の大転換を狙う歴史的攻撃であり、戦争に向けた国家改造攻撃、もう一つの改憲攻撃だ。

●「労働法制解体反対」を改憲阻止の闘いの中心に 
国鉄闘争全国運動の呼び掛け人・伊藤晃さんは次のように訴えている。
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 (労働者は)戦後労働法制をひとつの拠り所として、自分たちの労働と生活の権利を社会の根底で守ってきた。労働法制解体は、人びとの生活を掘り崩し、社会の結びつきを破壊するものである。それは人民の政治的な力と意志バラバラにする意味をもっている。したがって、それは改憲の重要な要素であると考えなければならない。『労働法制解体反対』は、改憲阻止の闘いの中心に座らなければならないものであると私は考える。        ・
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安保・戦争法強行以降、改憲と戦争に向けた大反動が急ピッチで進められている。自民党文部科学部会は、6~7月にかけて、「偏向教員調査サイト」を立ち上げて、「政治的中立を逸脱」した教員を「密告」するよう呼び掛けた。まるで戦前の思想統制そのものだ。教育だけではない。高市の「電波停止」発言やNHK会長や経営委員長に極右の人物を据えていく人事などマスコミに対する激しい攻撃の中で、批判的報道が消し去られようとしている。財界は「軍需産業を成長戦略の柱として育成せよ」という意見書を政府に提出し、政府と一体となって、巨額の武器輸出をめぐる国際争闘戦にのり出している。朝鮮半島-東北アジアをめぐる戦争の危機が切迫している。国家主義・排外主義が煽られ、国会では改憲の発議に向けた具体的審議が始まろうとしている。優勝劣敗の競争原理を社会の隅々まで強制した新自由主義攻撃は、津久井やまゆり園事件のような恐るべき現実を生み出した。そしてついに、また再び国民統合の象徴として天皇が社会の前面に登場しようとしている。
さらに安倍政権は、連合に手をつっ込んで揺さぶり、改憲勢力として取り込もうとしている。そうしなければ9条改憲まで行き着くことはできないと考えているのだ。

●東京-ソウル11月国際共同行動へ!

全世界で、労働法制解体攻撃に反対とて労働者が闘いに立ち上がっている。燎原を焼き尽くすようなゼネストが闘いわれている。日本の労働者も、固くスクラムを組んでその戦線に加わらなければならない。
朝鮮半島・東北アジアをめぐる戦争の危機が切迫している。この戦争を絶対に止めなければならない。
われわれは、この二つの固い決意を込めて、民主労総ソウル地域本部とともに、11月労働者集会を全世界に呼びかけることを決断した。その闘いは、国鉄闘争が切り開いた地平があるからこそ、必ず力をもつと確信している。改憲・戦争と労働法制解体攻撃に今こそ反撃を開始しよう。闘う労働組合を甦らせよう。

  第二次安倍政権と雇用・労働政策の歴史的転換

●安倍政権と労働法制解体攻撃
安倍政権は「憲法改正」を使命とする政権だ。一次政権時代には、教育基本法を改悪し、改憲に向けた国民投票法を制定し、労働基準法から労働契約に関する部分が分離され、労働契約法が制定された。労働契約を一般の契約と同じ位置に突き落としてしまったのだ。歴史的な経緯を見ても明らかなように、戦後の憲法体制は、労基法と教育基本法と憲法が不可分一体となって形成されてきた。安倍はそれに一斉攻撃を加えたのだ。
しかし、この攻撃は、安倍自身が体調を崩して政権を投げ出すだす中で、一旦は中途半端な形で挫折せざるを得なかった。
だが、労働法制に対する攻撃は、それから6年後の第二次政権成立をもって、決定的にエスカレートした形で再開される。第二次安倍政権が成立したのは2012年12月26日であったが、安倍は直ちに「民間活力の爆発がキーワード」「そのために阻害要因を徹底的に除去する」「世界で一番企業が活動しやすい国にする」と宣言し、社会丸ごと民営化、「世界最高水準」の規制緩和に突き進みはじめた。その最大の核心にすえられたのが、雇用・労働政策の原理的転換を狙う攻撃である。

●「国家改造」狙うクーデター的攻撃
そのために、経済財政諮問会議、日本経済再生本部、産業競争力会議、規制改革会議等、何層にも重なる会議・会合が設置された。そこに竹中平蔵など、安倍をとりまく最悪の新自由主義者や国家主義者が集められ、本来なら何の権限もないはずの者たちがすべてを決定し、命令していく枠組みが確立された。
司令塔の役割を果たし、政策決定のプロセスを動かしたのは事務局に集められた経産省官僚であった。雇用労働政策を審議し決定するというのに厚労省は外され、必要に応じてヒアリングに呼ばれるだけの存在に貶められた。それはある種の反動的クーデターであった。
厚労省は、「雇用ルールは、条約上、労使間で協議することが求められており、労政審での審議を経ることが必須」と「抵抗」したが一蹴された。こうして様々な提言や報告書が作成され、閣議決定され、法制化されていったのである。
こうした国家改造的な攻撃は、参院選後の内閣改造でもよりエスカレートし、冒頭にも述べたように、厚生労働省の組織改編までが断行されるに至り、さらには来年の通常国会では、「働き方担当大臣」を厚労省の特命大臣として任命するために国家行政組織法の改悪が画策されている。つまり、労基法や労組法的な要素を少しでも残そうとする守旧派官僚は全部ぶっとばすと宣言したのだ。
攻撃のやり方は、国鉄分割・民営化のときと全く同じだ。当時も中曽根は、国体護持派・守旧派国鉄官僚や運輸省官僚を叩きつぶすことによって国鉄分割・民営化を強行したのだ。そうした意味でも、「働き方改革」は、改憲・戦争への突進と一対をなす「もう一つの改憲攻撃」である。
とくに、雇用問題を最優先課題として取り扱った規制改革会議では、その冒頭から、「この2年程度で、これまでの規制改革に決着をつける意気込みで取り組む。そのためにはロケットスタートが大事」「『何を』やるかよりも『いかに』進めるかが問題だ」(大田議長代理)といった挑発的な意志統一の下に審議が進められた。こうして、国鉄分割・民営化以来の社会の大転換を狙う攻撃が開始されたのである。

●労働者の権利が危機に瀕している
それから4年。労働法-労働者の雇用と権利は今まさに危機に瀕している。

▼「私はこれまで何度か『労働法の危機』の語を用いたことがあるが、今日ほど文字どおりの『危機』を実感させる時代はない」(西谷敏・大阪市大名誉教授)
▼「雇用をめぐる立法政策や法解釈を通じて形成された雇用政策や解釈の基盤を、根底から掘り崩してしまおうとする、歴史的転換とさえいいうる」(野田進・九州大学名誉教授)
▼「日本の労働法は、多くの労働者にとって『氷点下』の凍結状態に陥ってしまい、労働と生活は危機的状況に直面している」(脇田滋・龍谷大学教授)。

多くの労働法学者が警鐘を鳴らしている。戦後労働法制が危機に瀕している。たが、最大の問題は、これほど重大な事態が進行しているというのに、労働組合の反撃が全くと言っていいほどないことだ。現場の労働者には、何が起きようとしているのかすら知らされていない。労働運動のこの現状にこそ本当の危機がある。これほど深い対立・衝突が社会に存在し、無数の労働者があらゆる意味で限度と限界をこえる攻撃にさらされ、怒りの声は社会の隅々まで積みあがっているというのに、それが労働者の大衆的な闘いとなって登場していない。われわれは、今こそこの現実を打破し、労働者の団結した力にこそ、この社会を変革する力が
あるのだということを示さなければならない。

  戦後労働法制の解体狙う「働き方改革」攻撃

産業競争力会議や規制改革会議では、何が議論され、確認され、実行に移されようとしているのか。雇用・労働政策の驚くべき歴史的転換、原理的転換が進められているのだ。

最も焦点が当てられたのは、「正社員改革」と解雇規制・解雇制限法制の問題であった。それが、表裏一体の問題として議論されている。

  解雇規制・解雇制限法制の解体

●「労契法16条は解雇を規制していない」
第一に、解雇規制・解雇制限法制(解雇権濫用法理)が解体されようとしている。解雇規制については、これまでも、政府や財界は解雇規制の緩和を要求し、労働側はそれに反対しながら、ずるずると後退を強いられていくという構図で対立が続いてきた問題であった。
しかし、規制改革会議は、このような形で対立軸が形成されてきたこと自体が間違いだったと言い、これまでの議論を180度転倒させ、この問題に根本的に決着をつけなければいけないと主張している。
「解雇が規制されているというのは誤解だった」というのだ。「労働契約法16条は解雇を規制していない。客観的に合理的な理由を欠く解雇を例外的に権利濫用としているだけだ。しかし例外が極大化した。なぜか? (日本の正社員は)職務、勤務地、労働時間が原則無限定だから、社内で配転可能である限り解雇は正当とされないため。つまり、規制の問題ではなくシステムの問題だ」・・・これが規制改革会議の基調として、あるいは議論の前提として確認された意見であった。

重大な二つの問題
ここでは二つの重大な問題が提起されている。一つは、労働契約法制定(2007年)以降は、解雇規制など存在しないのに、従来の考え方を引きずってしまったことが問題だったのだと、発想の明確な転換を打ち出したことだ。
もう一つは、「日本の正社員は職務、勤務地、労働時間が無限定だから解雇しずらかったのだ」と言い出したことである。なぜ突如としてこんなことが持ち出されたのか。正社員制度を解体するための詭弁であり、労働者支配をさらに苛酷で奴隷的で使い捨て自由なものに転換させる口実・政治的攻撃に他ならないことは言うまでもないが、実はここにこそ、「働き方改革」攻撃の核心がある。つまり、「日本の正社員の特徴=無限定 だから解雇がなかなか正当化されない 限定すれば自動的に解雇自由になる」という得手勝手な論理を導き出すためだけに、突如「無限定だったことが問題」なる言われ方がされるようになったのだ。
これまでも、職務や職場、労働時間が限定された労働者は、正規・非正規を問わずいくらでもいた。だからと言って解雇が自由だったわけではない。この一点だけをとっても、規制改革会議の主張が詐欺・ペテンに他ならないことは明らかである。
しかし規制改革会議では、こうして「職務、勤務地、労働時間が限定された雇用ルールを整備すること」が最優先課題と位置づけられ、それに「限定正社員」「ジョブ型正社員」という名称が与えられた。そうすれば、解雇規制とか解雇権濫用という問題はそれ自身自動的に消失し、「その論理的帰結として、当該職務や勤務地の消失・縮小が解雇の正当な理由になるというだけ」の問題になると結論づけられたのだ。

●解雇・転籍自由社会が生み出される
「当該職務や勤務地の消失」は、必ずしも物理的な消失を意味しない。例えば、
JRがある職務や職場をそっくり外注化したとする。それは、JR側から見れば
その職務・職場が消失したことを意味する。それだけで、その職場で働く労働者
の解雇が正当化されるというのだ。
NTTや私鉄などで、《外注化・分社化-転籍・賃下げの強制》が既成事実として横行してきたが、これまでは、転籍については少なくとも(それが実際は他に選択の余地がない形で強制されたものだったとしても)本人の「同意」が絶対的な条件であった。だが、安倍政権の「働き方改革」が貫徹された社会では、《外注化=解雇・失職、転籍自由》が当たり前になるのである。

  最優先課題とされた「正社員改革」

「正社員ゼロ、解雇自由」 
第二に、解雇規制の問題と表裏一体で、「正規・非正規の二分論を超えた多様で柔軟な働き方を促進する」「正規、非正規という二極対立でものを語ること自体が間違っている」と言って、「正社員改革」なる方針が打ち出された。その意図は、深刻な社会問題として「非正規職問題」が存在していること自体を否定するところにある。「世界的に見て日本の正社員ほど特権的に保護されている存在はない」(竹中)、「必要なのは非正規職対策ではなく正社員改革」だというのだ。
そして、「非正規から正規に移行させる」という美名のもとに、「限定正社員(ジョブ型正社員)」を、①「社会通念上相当な働き方として広く普及させる」こと、②さらには「その際、処遇を変えないという考え方がしっかりと根底にある」ことが基本方針として確認されている。つまり、その職場、その仕事がある限り雇用し、無くなれば自動的に解雇でき、しかも非正規職と同じ処遇(超低賃金)の労働者を「正社員」と称して、これからの雇用の標準的な在り方にしようというのだ。
この報告を受けて、日本経団連は小躍りして喜び、「雇用保障責任について、従来型の正社員とは同列に扱われないことを明確にする法整備」を政府に要求した。つまり、解雇の責任が絶対に資本に及ばないように、初めから明確な法整備をしておくことが肝心だと念を押したのだ。

●「5年ルール」を悪用した雇用破壊
次に問題になったのが、どうすれば限定正社員を大量に生み出すことができるのかであった。規制改革会議の委員たちは、様々な議論の末に、労働契約法の「5年ルール(無期雇用転換申込権)」を悪用すればいいのだということに気づき、それ以降は異様に熱を帯びた議論が展開されている。
規制改革会議の発足当初のスタンスは、“無期雇用転換申込権など、民主党政権時代に作られた条項であり認めない”“適用除外の『雇用特区』を作って骨抜きにせよ”というものであった。しかしそれは、厚労省の「抵抗」などもあって、国家戦略特区法の特区項目から外され、一旦は頓挫する。
だが、その躓きをきっかけに議論の方向転換が行なわれ、「5年ルール」の活用(悪用)こそ「正社員改革」の最も有効な手段になるという主張に変わっていく。“これを使えば限定正社員を大量に生み出せるだけでなく、『5年で一旦全員解雇・選別再雇用』という国鉄分割・民営化型の攻撃を社会全体に拡張することができる”と規制改革会議の委員たちは考えたのだ。それは言うまでもなく脱法行為・違法行為だ。しかし、2018年に向けて、それが今まさに様々な職場で実行に移されようとしているのである。

  労働者派遣制度の合理化

●「1985年以来の転換」・・改悪労働者派遣法
第三に、「労働者派遣制度の合理化」と称して、派遣法の抜本的改悪が検討され、すでに昨年9月、この方針に基づいて労働者派遣法の改悪が強行されている。それは、マスコミが「1985年以来の転換」と報じるほどの大改悪であった。 具体的には、「常用代替防止」の「原則」を崩すことに焦点があてられた。「常用代替防止」とは、「常用雇用を派遣に置き換えてはならない」ということである。だから、派遣労働者を導入できるのは、26の専門業務か一時的・臨時的業務に限られてきたのだ。
派遣法は1985年の制定以降、たび重なる改悪によって、当初は13の専門的業種に限られていた対象業務がどんどん拡大され、ついには製造業も含め原則自由化されるところまできていた。しかし、「常用雇用を派遣に置き換えることはできない」という点だけは「最後の歯止め」として維持されてきた。それは当然のことで、そこまで崩してしまえば、この社会の雇用は全部「ハケン」になってしまいかねないからだ。安倍政権は昨年9月の派遣法改悪でそれを突き崩し、ハケンの扉を完全に開け放ってしまったのだ。
さらに、規制改革会議は、「民間人材ビジネス」を成長戦略の一つの柱として位置づけることが確認されている。派遣法改悪を突破口として、「民間人材ビジネス」なる奴隷商売を社会に蔓延させようとしているのだ。
「中間搾取の禁止」は、労基法の根幹をなす思想である。「常用代替防止」を破棄することは、労基法を最後の一撃を振り下ろすことを意味する。戦後労働法制はまさに歴史的岐路に立ったのだ。

●「常用代替防止」破棄のペテン
しかも、「常用代替防止」を破棄するために掲げられた理由が驚くべきペテンに満ちたものであった。「『常用代替防止』は、正社員を派遣社員との競争から保護する、諸外国にはない規定であり、対等な立場での競争条件を保障するべきである」「常用代替防止は正社員の保護を目的としており、派遣労働者の保護と必ずしも相容れない」というのだ。
あたかも正社員を保護するために派遣労働者が犠牲にされているかのように描きだすデマによって事の本質が意図的にすり替えられている。問題は、派遣労働という非人間的な働き方を解き放ったことにあるのに、それが、正社員と派遣社員の対立にすり替えられ、分断が煽られているのだ。正社員であろうが、非正社員であろうが、中間搾取をしてはならないことが労基法の大原則なのだ。「常用代替防止」はそこから発している最低限の規制であり、正社員を保護しているわけではない。
こうして、企業の側は、どんな業務にでも、3年毎に人さえ入れ替えれば恒久的に派遣を使い続けることができるようになった。派遣労働者の側から見れば3年毎に首を切られ、使い捨てられていくということだ。

  就業規則の万能化

●一方的な不利益変更を合法化
第四に、就業規則を万能化し、不利益変更を含む一方的変更が合法化されようとしている。それは、団体法・社会法としての労働法を解体し、団結権・団体交渉権・団体行動権を否定し、雇用や労働条件を労働者個々人の単なる契約関係にバラバラにしていこうとする攻撃だ。
しかもそれが、「正社員改革」=限定正社員制度の導入を突破口にして進められようとしている。あらかじめ就業規則に勤務地や職務を限定し、「その職場や仕事が無くなったり縮小した場合は解雇する」と規定しておけば、就業規則ひとつで自動的に解雇できるようにするという方法で限定正社員制度が導入されよう
としているのだ。さらには、雇用期間の上限・満了を、就業規則であらかじめ5年未満に定めておくというやり方が全企業に蔓延しようとしている。そうすれば、
5年以降も雇用が継続される場合も、実質的には新規採用と同じことにならざるを得ず、どんな賃金・労働条件であろうと、否応なく就業規則にあらかじめ定められていることに従うしかなくなる。こうやって、「正社員改革」「解雇規制解体」「就業規則万能化」が三位一体で進められているのだ。

●労働契約法の本質
こうした企みの原点は、2007年の労働契約法制定にある。労契法によって、就業規則改訂について、職場代表の意見を聴取する等、形式的な手続きさえ整っていれば「合理的と推認する」という考え方、法的な枠組みがつくられたのである。こうやって、就業規則の一方的な不利益変更を正当化しようとしたところに、
労契法制定の核心があったのだ。
しかし、当然ながらこの点は労政策審でも重大な対立の焦点となり、最終的には、当初の政府側の狙いからすれば、その解釈にあいまいさを残したまま今日まできたのが経緯であった。
だから、第二次安倍政権下の産業競争力会議は、「就業規則の不利益変更の正当化について、2007年労契法は挫折した」と評価し、「労働条件変更を正当化しうる従業員代表法制が必要」「労働条件の不利益変更の効力が裁判が確定しない限り不明というのは望ましくない」とする議論が展開された。今度こそは就業規則を万能化し、その一方的変更を合法化しようというのだ。それは労働組合の存在を根本から否定するに等しい攻撃である。

  労働移動型への政策転換

安倍政権は、こうした雇用・労働政策の歴史的転換を、「雇用維持型から労働移動支援型への政策転換」と言っている。終身雇用制度を最後的に解体して「首切り自由」社会をつくり出そうということだ。
それは抽象的に言っているだけでなく、すでに実行に移されている。2013年から15年にかけて、「雇用調整助成金」は1175億円から193億円に激減する一方、「労働移動支援助成金」は2億円から349億円に増えている。政府の政策が、「雇用を維持した企業にカネを出す」から「首を切った企業にカネを出す」に明確に変わったのである。

  雇用破壊の最後の扉が開く

以上のように、安倍政権のもとで進められているのは、労働者の雇用や権利についての考え方を根本的に覆す攻撃である。とくに、規制改革会議等では、《労働契約法と派遣法を有効に使えば、戦後労働法制を一気につぶすことができる》ということに全体の意見が収斂(しゅうれん)されている。改悪労契法施行から5年、改悪派遣法施行から3年を迎える2018年が歴史的な分岐点になろうとしている。
さらに安倍は「一億総活躍プラン」で、「躊躇なく法改正の準備を進める」と述べ、労契法、パートタイム労働法、派遣法の一括改正を強行しようとしている。また、今秋の臨時国会では、8時間労働制そのものを破壊する労働時間規制の解体(残業代ゼロ法制定)や解雇金銭解決制度の法制化が画策されている。さらに、一旦は挫折した「雇用特区」の設置も議論されている。「雇用崩壊」への最後の扉が開かれようとしているのだ。

  国鉄分割・民営化攻撃の全社会への拡張

CTSの就業規則改悪提案 

起きようとしているのは、国鉄分割・民営化攻撃の全社会化だ。「5年、3年で一旦全員解雇」「『限定正社員』として選別新規採用」という国鉄方式の攻撃が社会全体に拡張されようとしている。こうして、労働者を、名ばかりの「正社員」、「限定正社員」という名の非正規職に突き落とそうとしているのだ。
千葉鉄道サービス(CTS/JR東日本の子会社)が導入しようとしている雇用形態改悪攻撃は、この方針を最も忠実に就業規則化しようとするものだった。
2月に事態が明らかになるや、全職場が炎上するような激しい怒りの声につつまれた。われわれは直ちに闘争体制を確立し、2波のストライキを構えて4月1日実施を阻止した。CTS当局は、あまりの怒りの強さ、あまりにも露骨な脱法行為ゆえ、あらためて修正提案をせざるを得なくなり、選別解雇を露骨に謳うような文言は違う表現に変えられたが、本質的には何も変わらない攻撃が10月にも
強行されようとしている。
CTSの約8割を占める非正規の社員全員に、労契法が施行された2013年を起点として「あなたの雇用期限はあと何年」と通告し(新規採用者は始めから「最長5年で満了」の契約で雇用)、5年目に選考試験を実施し、合格した者だけを「限定社員」として採用するというのが当初の提案であった。修正提案では、《「選考試験」「採用」》が《「面接」「判定」》という表現に変更されたが、本質的には何ひとつ変わっていない。結局、「無期転換」ではなく、「新規採用」に限りなく近いのだ。しかも、その際の賃金は時給820円~920円。修正提案ではこの時給を30円~50円上げた提案が行なわれたが、それは最賃が25円引き上げられたことを反映させただけのことであった。
闘いはこれからだ。労契法の5年ルール、派遣法の3年ルールを使った雇用破壊攻撃がどれほど激甚に社会のあり方を変えるのか。国鉄分割・民営化の際に何が起きたのかを考えてほしい。国鉄という一企業への攻撃だけでも、日本の労働運動が一旦瓦解するほどの事態が起きたのだ。その攻撃が社会全体に拡張されようとしているのだ。

  職場に闘う労働組合を!

新自由主義攻撃への大反乱が開始されている
世界に目を転じれば、日本と全く同様の労働法制解体攻撃が時を同じくして世界中で吹き荒れている。発展の余地を失い、出口のない危機にあえぐ資本主義体制が、戦争の危機と労働者への総攻撃を生み出しているのだ。そして、こうした現実への我慢のならない怒りの声が世界中でゼネストとなって燃え上がっている。
世界中で期を一にして吹き荒れる労働法制解体攻撃し、資本主義・新自由主義の断末魔に悲鳴に他ならない。この攻撃との闘いが、世界の階級闘争の最前線を形成しているのである。
韓国では、民主労総80万が、組織の存亡をかけた命がけの闘いを展開している。ハンサンギュン委員長以下総連盟の執行部の多くが獄中に奪われながら、昨年4月以降、1年以上にわたって断続的なゼネストを闘い続け、支持を広げ、労働改悪5法案の国会上程を阻止している。仕掛けられている攻撃は、派遣法改悪、解雇自由化、公共機関への成果年俸制の導入、雇用延長の美名の下に賃金を4割も下げて外注化を推進する賃金ピーク制導入、就業規則の万能化、全面的な民営化攻撃、年金制度改悪等、日本と全く同じものだ。
フランスでも、続発するテロ事件後の非常事態宣言を打破して、労働法制解体攻撃に対する5ヵ月に及ぶゼネストが闘いぬかれた。その間、逮捕拘束された者は2千人に及び、労働者だけでなく高校生・大学生も、「私たちの未来を奪うな!」と訴えて学校をバリケードで封鎖して共に立ち上がっている。解雇規制緩和、非正規職拡大、週35時間労働の規制緩和、そしてそれらを就業規則の一方的変更をもってできるようにすること等、やはり日本と全く同じ攻撃が仕掛けられている。
インドでも、この9月2日、企業が労働者を解雇しやすくする労働法制の改悪等に反対して、全土で1億5千万人がゼネストに立ち上がっている。

●今こそ、国鉄闘争先頭に労働運動の再生を!

長年の闘いによって獲得されてきた雇用や権利が激しい攻撃にさらされているのは世界共通の現象だ。しかし、これだけの攻撃を受けながら、労働組合の反撃がこれほどわずかな国は日本以外に見当らない。こうした労働運動の深刻な危機を生み出した最大の原因は国鉄分割・民営化攻撃にある。
国鉄分割・民営化は戦後最大の労働運動解体攻撃であった。それを強行した中曽根首相は、後に「国労を潰し、総評・社会党を潰すことを明確に意識してやった」「お座敷を綺麗にして立派な憲法を安置することが目的だった」と公言したが、実際、国鉄分割・民営化のわずか2年後には総評が解散の追い込まれ、その後社会党も自ら解散した。つまり、日本では一国のナショナルセンターが解散に追い込まれるところまで、新自由主義攻撃が徹底的に貫徹されたのだ。それは、国際的にも他に例のないことであった。
この現実が今も日本の労働運動に影を落としているのだ。国鉄分割・民営化は決して過去の問題ではない。今現在の問題だ。より正確に言えば、われわれが国鉄分割・民営化に拘って、30年に及ぶ闘いを継続したことによって過去の問題にすることを許さなかったのだ。
しかもわれわれは、昨年6・30最高裁決定によって、ついに国鉄分割・民営化が国家的不当労働行為であったことを明らかにさせた。この地平に立っていよいよ反撃を開始しなければならない。
日本の労働運動の現状は、労働者が社会を変革する力を失ってしまったことを意味してはいない。安保戦争法の強行をめぐって3ヵ月余りにわたって国会前を埋め尽くした闘いの高揚が示したように、日本の労働者は立ち上がりはじめている。生きることもできないような現実に対し、労働者が全国の無数の職場で団結する力を取り戻したとき、時代は間違いなく動きはじめる。今こそ、闘う労働組合を再生させよう。

●現代の産業報国会をめぐる闘い
労働運動をめぐる攻防が再び最大の焦点になろうとしている。化学総連(4万6千名)の離脱問題をめぐって連合が揺らいでいるが、その背景にあるのは、安倍政権による労働政策の歴史的転換攻撃改憲と戦争への突進だ。
第2次安倍政権は発足当初から一貫して、連合の存立基盤にくさびを打ち込んで揺さぶり、改憲勢力として取り込むことに全力をあげてきた。連合会長との会談を拒否して「官製春闘」に引きずり込んだこと、労政審を形骸化させて連合が労働政策に関与する余地を奪ったこと等は、全部連合の切り崩しを狙ったものであった。また、「同一労働同一賃金」も、全労働者を非正規職並みの賃金に突き落とす攻撃であると同時に、連合の要求を取り込んで換骨奪胎することを通して分断し、連合の存在価値そのものを揺さ振る狙いをもっている。
櫻井よしこが一昨年の11月に産経新聞で「UAゼンセンよ、官公労と決別し、連合を分裂させよ」と言ったのも、明らかに安倍の意志を受けた主張であったし、昨年6月のUAゼンセン・逢見会長と安倍の極秘会談もそうだ。
労働法制解体攻撃と一体で、労働運動の大再編が始まっている。この情勢を階級的労働運動を再生へのチャンスに転化しなければならない。求められているのはこの攻撃に立ち向かう労働運動の変革だ。今こそ闘う労働組合を甦らせよう。
11・6労働者集会、東京-ソウル国際共同行動に全力で結集を!